第115話 フィルランカ達の考察


 モカリナは、イルーミクの仲介で、フィルランが、何でリズディアから、約束を取り付けられたのか、経緯を聞く事ができた。


 フィルランカが、モカリナより先にリズディアと出会えた事、リズディアとしたら、モカリナは、ついでだという事を伝えられない事もあり、言いそびれてしまったのだ。


 フィルランカは、ジュエルイアンの仲介でリズディアに出会えた事を、モカリナに伝えた。


「なるほど、その南の王国の商人が、フィルランカ達をリズディア様に会わせてくれたのは分かったわ」


 モカリナが、納得した様子なので、フィルランカは、ホッとしたが、そのフィルランカをモカリナは、ジロリと見る。


 また、フィルランカが緊張した。


「でも、何で、直ぐに言わなかったのよ。 リズディア様が、来いと言ってくれたのにぃ」


「だって、偶然でも、私が、先に、リズディア様と、お食事を、して、しまったじゃない。 何だか、悪いなって、思って、……」


(危ない、危ない。 本当の事は、言えないけど、上手く、言い訳できたわ)


 フィルランカは、黙っていた事と、リズディアとの話から、モカリナが、オマケだと言う事もあったので、なかなか言い出せずにいた。


「そんな事、無いわ。 偶然にリズディア様と出会えて、私と会わせてくれる約束まで取り付けてくれたのよ。 さすが、私のお友達よ。 私とリズディア様の間を取り持ってくれるなんて、私は、とても良いお友達をもてたわ」


 モカリナは、神様でも見るような表情で、フィルランカを見るのだが、フィルランカは、申し訳なさそうな表情をする。


(あー、ごめんね、モカリナ。 あなたは、居なくてもいいと言ったなんて言えないわね)


 フィルランカは、困った様子で、苦笑いをした。


「ねえ、それより、お泊まりって、どうしようか」


「あ、義姉様が、家での事は全部手配するから、体一つで来てもらって構わないって、言ってたわ。 家着も寝巻きも全部用意してあげるから、学校が終わったら、そのまま、来るだけでいいって言ってたわよ。 ああ、それと、フィルランカは、エルメアーナと、一緒で、ミルミヨルさんの服を、ちゃんと着てくるようにって、言ってたわ」


 それを聞いて、モカリナは、イルーミクから、フィルランカに視線を向けた。


「ねえ、フィルランカ。 今のは、どう言う事なの?」


 そのモカリナの疑問に思った表情を見て、フィルランカは、ドキッとしたようだ。


「あ、あのね。 リズディア様は、新しいドレスを考えているらしいのよ。 旦那様と、ジュエルイアンさんに、色々、言われていたのよ。 だから、ミルミヨルさんの服を参考にしたいらしいのよ」


 フィルランカは、辿々しく答える。


(どうしよう。 オマケだって話は、絶対にできないわ)


 そのフィルランカの、様子にモカリナは、疑問を持ったようだが、それ以上、追求はしない。


「へーっ、そうなの。 ミルミヨルさんの衣装の事が知りたいのね」


 すると、モカリナは、考えるような仕草をする。


「だったら、私も、その日はミルミヨルさんの服を着ていくわ」


 モカリナは、勝ち誇った様子で答えた。


「リズディア様が、新しい事を考えている。 それは、ミルミヨルさんの衣装が参考になるって事なら、私も、ミルミヨルさんの衣装を着ていくわ」


 それを聞いて、フィルランカは、キョトンとした。


「あれ、だって、モカリナは、自分の家の仕立て屋さんの服をいつも着ているから、大丈夫なの?」


「平気よ。 私は、学校には着てこなかっただけ、一応、ミルミヨルさんの店で、数着は作ってもらっているのよ。 だから、持っているわ」


(さすが、侯爵家ね。 四女でも、家の事があるから、ちゃんとお金が掛かっているのね)


 イルーミクは、黙って、モカリナの話を聞いていた。


(私の知らないところで、モカリナも、ミルミヨルさんを使っていたのね。 さすが、貴族の方だわ)


 イルーミクとフィルランカは、モカリナの話を聞いて、侯爵家の力が凄いと思ったようだ。


 フィルランカは、帝国臣民の家に住み込みという形になっており、ただの帝国臣民には、考えが及ばない事なのだ。


 また、イルーミクにしても、貴族ではあるが、爵位の無い貴族なのだ。


 まして、兄弟姉妹の多い家なので、イルーミクには、モカリナ程、お金はかけてもらえてなかったので、モカリナの発言が、少し、羨ましく思ったようだ。


「そうね。 きっと、リズディア義姉様も、沢山の衣装が見れた方が、考えも、まとめ易いと思うわ。 3人分のデータが取れるのだから、有益だと思うわ」


 それを聞いて、モカリナは、嬉しそうにしている。


 リズディアの役に立てると思うと、とても嬉しいようだ。


「でも、私達の衣装って、何で必要なのかしら?」


 フィルランカは、不思議そうに、ポロリと口にした。


 それを2人は、聞き逃さなかった。


「フィルランカ! それは、どういう事なの?」


 キリッとした表情で、モカリナが、フィルランカに問いただした。


「あ、あの時の話だと、ミルミヨルさんの服は、10代に特化しているらしいのよ。 でも、リズディア様は、20代より上の世代を狙った衣装を作りたいらしいのよ。 それだと、ミルミヨルさんと競合にならないらしいわ」


 そのフィルランカの話を聞いて2人は、考えてしまった。


 フィルランカの話を聞いても、2人には結論は出なかったが、モカリナには、別の疑問が浮かんだようだ。


「ねえ、ミルミヨルさんの店って、そんなに大きくは無いわね。 あの大きさで、この学校の生徒の衣装をどうやって作ったのかしら? 去年、フィルランカが入学してから、急にミルミヨルさんの服を着る生徒が増えたのよ。 100着なんて数じゃなかったわ」


 モカリナの話を聞いて、イルーミクが、何かを思い出したようだ。


「そう言えば、去年、イルル兄様が、工房をフル稼働してお洋服を作っていたわ。 後で、お父様に、お小言を言われてたみたいだったわ」


「あ、そう言えば、そんな事を言ってたかもしれないわ」


 フィルランカは、リズディア達との食事の時に出た話を思い出したようだ。


「ジュエルイアンさんが、イルルミューランさんに、儲けたとか、言ってたわ。 確か、帝国以外にも売ったとか言ってたわね」


「ああ、きっとそれよ。 去年は、それの件と、結婚とで、大忙しだったのよ。 そうしたら、お父様に小言を言われてたわ。 結婚式の前に新郎に倒れられては困るからだろうけどね」


(あれ、生産を止めた時の話って、そんな風には言ってなかったわ)


「じゃあ、去年の入学式の後、ミルミヨルさんは、イスカミューレン商会を使って、大量の衣装を作ったのね。 だから、あの速さで、ミルミヨルさんの衣装が、学校で広まったのね」


「それだけじゃなかったみたいなのよ」


 イルーミクを不思議そうにモカリナは見た。


「その後、北だの西だのと、あちこちに輸出したみたいなのよ。 職人さん達にどんどん仕事を頼んだみたいなのよ。 イルル兄様ったら、本当に忙しそうにしていたわ」


(あの時の話よね。 職人さんの仕事を増やしすぎて、お父様に止められたとかって話よね。 てっきり、仕事だけ職人さんに振っただけだと思っていたら、イルルミューランさんも、遅くまで頑張っていたのね。 忙しいのは、職人だけかと思っていたけど、商人の方も大変なのね)


 フィルランカは、黙って話を聞いていた。


(リズディア様の事を、もっと知れたら、それと、イルルミューランさんやジュエルイアンさん、ヒュェルリーンさんからも話が聞けたら、私も立派な商人になれるかもしれないわ)


 フィルランカは、2人が話しているのを聞きつつ、笑みを浮かべていた。

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