詩「冬に見る夢」
有原野分
冬に見る夢
唐紅の参道に
夕焼けが冷たくて
逃げ惑う赤トンボの思い出を
両方の手のひらで包み隠した
幼いあなたと
紅葉散る中走り回った
追いかけてくる影と
ケンカして
透明な空に色を塗る
お互いの手にあった
枯れ葉の色と
その下に転がる
どんぐりの
不揃いな色彩が好きで
だから僕たちは両手を後ろに隠して
気づかれないように紙粘土を砕いてい
く
ドライヤーの熱で温まる
あなたの手元にある涙の影に
優しさの形が根を下ろすその時まで
秋がさよならを言って
三日月の淡い光のような
冷たい冬が今年もやってきて
通い猫の姿はもう見えない
軒先の茶碗のふやけた小さな希望に
おかわりする姿を思い浮かべて
それは残光
余韻の中に人は生きていけないのかと
食洗機を通って流れていく水の
冬から逃げるその様に
なにも声をかけることができないよう
に
また来年の秋に
飛び回っている赤トンボが
私の夢を赤く染める
お休みなさいと
娘が布団の中でつぶやいた
詩「冬に見る夢」 有原野分 @yujiarihara
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