第7話 ギャップが激しい子

 夏に近づいて僕は少しメンタルが脆くなっていた。

 風邪をひいているわけではないが、1週間以上学校を休んでいた。

 というか、避けていたのかしれない。


 パジャマで毎日過ごしていた。

 勉強もろくにせずテレビやゲームばかりでごろごろしている。

 それでも学校に行かなきゃなあとはなんとなく感じていた。


 けど、だるいなぁていうのが本音。


 日曜日になって、家族はみんな外出しており、家には僕一人だけになった。


 部屋でゲームをピコピコしているとインターホンが鳴った。


「はい?」

「あ、あの……同じクラスの鮫島です」


 僕が出るとマンションの一階に来ていたのは、クラスでも真面目で通っている委員長、鮫島さんだった。

 鮫島さんは成績優秀で、先生からも人気だった。

 自分から積極的に行動する人ではないのだけど、人に頼まれると喜んで助けるタイプ。

 制服もキッチリ着こなすし、話し方も上品。

 どこかおとなしい感じで、話すときも優しいけど小さな声で喋る女の子らしい子だった。


 それにしてもなんで鮫島さんが僕の家に?

 今の班では確かに同じグループなのだけど、彼女とはそんなに話したこともない。

 せいぜいが行事とかで必要なときに話すぐらいだ。

 

「鮫島さん? どうしたの?」

「うん、ちょっと近くに寄ったから」

 

 僕はとりあえず、一階の自動ドアを開けて、彼女がエレベーターであがってくるのを待った。

 ひょっとして、僕が連日学校を休んでいるから、先生に言われて委員長として、登校刺激でもするつもりなんじゃないかな……。

 やめてほしい。

 正直会いたくないなぁと思っていた。


 再びチャイムが鳴り、彼女が自宅前のドアまでたどり着いたことが知らさせる。

「ハァ……」

 ため息交じりにドアノブを開く。

 強い風と共に現れたのは、タンクトップにかなり丈の短いショートパンツ、それにミュールをはいた少女。

 僕は一瞬、目を疑った。

 その子があのクラスでおとなしくて真面目なスカート丈の鮫島さんって思いもしもなかった。


「あの、童貞くん。いきなり来てごめんね」

「い、いや別にいいけど」

 僕は目のやり場にこまった。

 こんなに露出度の高い同年代の子に会うのは初めてだったからだ。


「これ、この前パパたちと長崎に行ったの。だからよかったらご家族と食べて」

 鮫島さんは優しい声で僕にカステラをくれた。

 僕は学校で何度も鮫島さんの姿を目にしていたが、ハッキリいって地味な子という印象が強かった。

 しかし、今日の彼女ときたらどうだ?


 プライベードでは私服はこんなにもギャルギャルしいのか?

 とんだおビッチさんではないのか……いや、待てよ。


 アポなしでわざわざ僕の家におみやげを持ってきただと?

 しかもこんな露出度の高いファッションで。

 つまり僕が気になって仕方ないから、おみやげをパパさんに頼んでうちに来る口実を作ったんだ!?


 この子、僕に惚れているかもしれない!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る