短編集 一行目をください
鳥野ツバサ
お題:「『月が綺麗ですね』って昼間は使えねぇじゃんか、夏目漱石は許さん」
「『月が綺麗ですね』って昼間は使えねぇじゃんか、夏目漱石は許さん」
「お前それ言う相手いないだろ」
9月下旬のとある朝、男子高校生二人の教室の窓際での会話。
「うるせえ。一般的なって話だよ。だって彼女とデート中に午後3時代官山のおしゃれなカフェでお茶飲んでるとき彼女がそう言ってきたらなんて言えばいいんだよ」
「知らねえよ。しかもいやに具体的だな。じゃあシミュレーションするか?おれ彼女役やるから」
「きもっ」
「うるせえ」
『神長くん、あの、えっと、月が...綺麗だね』
『うん?いや、月なんて見えないけど?』
『え?あ、ああ、そうだね。ごめんね変なこと言って』
「バッドエンドまっしぐらだよ」
「お前が答えたんだろうが。じゃあ次は話に乗ってみたら?」
「よし、来い」
『神長くん、あの、えっと、月が...綺麗だね...』
『うん?ああ、そうだねぇ、綺麗だねえ』
(空を見上げる二人)
(空を見上げる周囲の人々)
(月なんて見えないと気づき奇異の目で見てくる周囲の人々)
「いや周囲の人々の面倒まで見切れねえよ」
「そうは言ってもねえ、月が出てないのに月が綺麗とか言ってたらねえ」
「ああ、そもそも月が出てないのにそんなこと言う女いる訳ないじゃないか」
「お前が言い出したんだけどな。じゃあこれでいくか」
『神長くん、あの、えっと、太陽が...眩しいね...』
『え?ああ、確かに眩しハックション!!』
「いや光クシャミ反射かよ。日本人の四分の一がそうだって言われてるけど雰囲気ぶち壊しだよ」
「そうは言ってもなあ、俺太陽見ると鼻がブエックション!!」
「さっきよりうるさい」
「そもそもなんだよ、太陽が眩しいって。他になんかないのかよ」
「お前が違うのがいいって言ったから考えてやったのに。ところでなんで急にそんな話し始めたんだ?」
「いやあ、ふと窓の外を見たら白い月が...あっ」
9月下旬のとある朝、秋晴れの空に白い下弦の月が浮かんでいた。
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