あの世でよろしくやってます。
戸織真理
第1話_死んだ?
「んふふ、逃がさないわよ」
映画に出てきそうな程に整ったスタイルの美しいお姉さんが、俺の腕にしがみついてささやく。
俺は腕に柔らかさを感じながら、これがもっといい場面ならよかったのにと思う。
「げへへ。
俺らが丁寧に色々教えてやるからよ」
酒の臭いを漂わせる
俺は残念ながら、質の悪そうな三人組に絡まれている。
「あたしたちの所に来なさいよ」
三人に引っ張られ、俺は無理矢理どこかへ連れて行かれそうになる。
必死に抵抗するが、三対一では分が悪すぎる。
その時、ふと後ろから声がする。
「お前ら、一体何をやっているんだ?」
その声に奴らの手が緩まったので、俺は体を三人から引き
声の主に女がボソボソ話す。
「いや、これは、何でもないんですよ、マッシモさん」
マッシモさんと呼ばれた男は、元気そうなただのおじさんだった。
だが、明らかに三人はビビっている。
「兄ちゃん、大丈夫か?」
マッシモという人物が、絡まれていた俺を気遣ってくれる。
その隙に怪しげな三人組は走り去っていた。
奴らの後ろ姿を見送りながら、俺はマッシモと呼ばれたおじさんに礼を述べる。
「ありがとうございました。
助かりました。
気付いたらここに居て、ナイフやら鉄砲を持ったあの人たちに絡まれてしまって。
今朝会社に行く準備をしていたはずなのに、おかしいですよね」
俺は何が起きたか分かっておらず、そんな気持ちを彼に
おじさんは頷いて同調する。
「そうかそうか。
まだ気持ちの整理ができてないんだな。
にしても、兄ちゃん、この
あいつらみたいな冒険者はほとんどいないから、安心しろ。
それに街に入れば、人の目もあるし、もう大丈夫だ」
俺は聞きなじみのない言葉をそのまま繰り返した。
「
「
説明あったろ?
それと冒険者っていうのは……って、大丈夫か?」
死んだ人間?
血の気が引いていく俺は、言葉をこぼす。
「……死んだ?
なぁ、俺は死んだのか!?」
俺は激しく動揺して、おじさんに問いただす。
彼は少々驚きながら返答する。
「ま、まぁ、いきなりは受け入れられないよな」
死んだことを彼は否定しない。
俺は死んだのか?
顔面蒼白になった俺に、彼はとある場所について語る。
「最初は金の池に行くといい。
金の池へ行くには、そこにある街の入り口から真っ直ぐ行って、大通りに出るんだ。
大通りから小道に入ったらすぐだ。
分からなけりゃ、誰かに聞くといい!
口で言うには、少し分かりづらいからなぁ!
がははは!」
豪快なおっちゃんだと頭の片隅で思うが、俺はそれどころじゃなかった。
死んだ?
死んだって何だよ。
「大丈夫か?
何かあれば、この俺を頼れよ!
あと住宅用品の魔具が必要になれば、我がマッシモ商会をよろしくな!」
茫然と立ち尽くす俺を置いて、マッシモというおじさんは行ってしまった。
最後に何か宣伝していたが、よく分からなかった。
俺はここに留まっても仕方ないと判断し、彼が言っていた金の池に向かうことに決めた。
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