第24話 VOODOO KINGDOM

エイダ「おい、もういいぞ」


クレメンス「アンデッドども、みんな正門に行ったかと思たら結構残ってまんねー」


ジジ「どうやら定期的に巡回してるみたいですね」


アプール「索敵に時間が取られますね…」


クレメンス「んー。ほな皆頼むわ」

「ワイの荷物持ちだけ残ってや」


「は!」


アプール「凄い…」

「もう見えなくなりましたよ」


クレメンス「司祭のお付きやからね」

「あれくらいはして貰わんと」

「粗方の敵は排除してくれるやろ」

「本丸向かうでー」


アプール「団長殿、彼らだけでやれるのでは?」


ロベルト「…まぁそう言うな」

「…行くぞ」


アプール「はい…」




クレメンス「お、何か開けた所出たで」


エイダ「待ち伏せ、だな」


ランマル「で、ゴザルな」


ーーー

かつては豊かな水を湛えていたであろう噴水の広場。


初代建国王の頭は髑髏どくろげ替えられ、その剣には童と覚しき体が幾重にも突き刺さっていた。


一行が辺りを警戒しながら弔いの為、その体に触れようとした時だったーーー



「きゃっきゃ!おじさんたちいらっしゃい!」

「お客さんだよ!お客さんだよ!」

「パーティーのはじまりはじまり!」


下腹の辺りを抉られるような咆哮が広場全体を揺るがす様に響き渡る。


「きゃー!こわいね!こわいね!」

「アイツがくるよ!アイツがくるよ!」



ロベルト「皆避けろ!」


ーーー枯れた噴水に飾られた建国王。


そのかつての威光を蹴散らす様にそれは顕れた。


捕食者の存在を否定するかの様に前方に配された、己が炎を体現するような深紅の瞳に縁取られた縦長の『それ』は、睨まれたものにこう告げる。


伏して死を待て。


重戦士の盾程もある鱗の下には、魔素が幾重にも循環する、変温動物には似つかわしくない熱が感じ取れる。


三人の童が吹き飛ばされて尚ケタケタと続けた笑い声を止めたのは、炎竜がその神殿の柱を想わせる前脚で彼らを踏み締めた時であったーーー



ロベルト「炎竜…!!」


エイダ「ぎゃー!やっべえよ!どうすんだアレ!」




クレメンス「はぁしゃーないなぁ」


純白のローブから幾重にも這い出る先込め式の滑腔式歩兵銃。背後には槊杖さくじょうと火薬を構えた側近。


クレメンス「一度言うてみたかったてん」


「ここはワイに任せて先に行けーやで!」


ロベルト「…クレメンスさん」

「…どうかご無事で!」


クレメンス「エンディングまでには駆けつけるよって美味しい所は残しておいてな!」


「司祭様、来ます」


クレメンス「ほいほい」


「この『慈悲深きクレメンス』」

「遠い夜空にこだまする竜の叫びを耳にさしたるわ!」

「あんじょう送ったるから大人しくしとくんやで!」



ーーー咆哮と銃声のcarnivalを背後に一同は烏瓜殿を目指す。


目の前には王宮を飾り立てる尖塔が巨人の槍衾の如く眼前に迫っていたーーー




次回  『バカみたいに愛してた』

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