殺しあい

「さぁ、どうぞ。始めてください!」


テレビカメラもあまりに凄惨な事件現場は、撮影するのに忍びないと思っているんだろうか?

少し離れて撮影している。


長山洋子は、もうスタートを切っているが、一向に始まる気配がない。

それもそのはず。

テレビカメラ越しに、自ら「殺人者」となるか。「被害者」となるか?どちらにしてもいい終わりにはならないだろう。


拳銃が重い。

 

村上のファンクラブの子達も、今回ばかりは黙っている。

応援したら、彼は殺人者になるのだ。


ツイッターやフェイスブック、そして、インスタグラムでも、まさに今この瞬間の動画が流れている。


「え?殺し合い?ーーコイツ、やばくね??」

「楽しそうじゃん?」

「早くやれー!勝負を始めろ!」

「結婚か、死かーーってとこだな」


流れている動画を見て、続々とコメントが寄せられる。


「お二人は私と結婚したいんですよね?」


「はい」


元気のない声で二人は答える。 

二人の表情から先程までの威勢の良さはなくなっていた。


「だったら、早く始めてくださる?ーー私を楽しませて!」


当然の事ながら、警察に捕まる暗い未来だけが見えた。


覚悟を決め、村上は拳銃を握った。

そしてそれを川中に向ける。


「おいおい。本気でやる気かよ?ーー冷静になれよ。俺がお前に何をしたんだ?」



「おいおい、本気でやる気かよ?ーーちょっと待てよ!俺がお前に何をしたんだよ?村上ーー」


その瞬間。

ツイッターなどでも盛り上がっていた。


「川中、命乞いか?」

「俺、昨日落選したけど、残らなくて良かった」

「いけいけ!村上ーー」


無責任な言葉たちが飛び交っている。


川中も覚悟を決め、その冷たい銃口を村上に向けた。


心配そうに二人を見守る村上のファンの子たち...。


「今すごい戦いが行われています。ーー勝てば結婚、負ければ死。彼らはどうなるのか?」


流石、テレビ関係者だ。

煽るのが上手い。

視聴者の関心は今この勝負に釘付けだろう。


そんな時。


引き金に指をかけたまま、村上が声を発した。


「すいません」


「どうしました?」


スタッフが駆け寄る。


「あの、、銃ってコレを手前に引けばいーんだよね?」


引き金に指をかけて聞いた。


「そうですよ。撃つと多少反動があると思われるので、気をつけて!!」


ーーそんな事を言われたら、余計に撃つのが怖くなるだろう。


長沢洋子は二人の顔を見比べて言った。


「あまりにも進展しないため、制限時間を作らせて頂きます!なお、制限時間は15分とさせて頂きます。ーー早く私に見せてくれますか?殺人のその瞬間をーー」


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