殺しあい
「さぁ、どうぞ。始めてください!」
テレビカメラもあまりに凄惨な事件現場は、撮影するのに忍びないと思っているんだろうか?
少し離れて撮影している。
長山洋子は、もうスタートを切っているが、一向に始まる気配がない。
それもそのはず。
テレビカメラ越しに、自ら「殺人者」となるか。「被害者」となるか?どちらにしてもいい終わりにはならないだろう。
拳銃が重い。
村上のファンクラブの子達も、今回ばかりは黙っている。
応援したら、彼は殺人者になるのだ。
ツイッターやフェイスブック、そして、インスタグラムでも、まさに今この瞬間の動画が流れている。
「え?殺し合い?ーーコイツ、やばくね??」
「楽しそうじゃん?」
「早くやれー!勝負を始めろ!」
「結婚か、死かーーってとこだな」
流れている動画を見て、続々とコメントが寄せられる。
「お二人は私と結婚したいんですよね?」
「はい」
元気のない声で二人は答える。
二人の表情から先程までの威勢の良さはなくなっていた。
「だったら、早く始めてくださる?ーー私を楽しませて!」
当然の事ながら、警察に捕まる暗い未来だけが見えた。
覚悟を決め、村上は拳銃を握った。
そしてそれを川中に向ける。
「おいおい。本気でやる気かよ?ーー冷静になれよ。俺がお前に何をしたんだ?」
※
「おいおい、本気でやる気かよ?ーーちょっと待てよ!俺がお前に何をしたんだよ?村上ーー」
その瞬間。
ツイッターなどでも盛り上がっていた。
「川中、命乞いか?」
「俺、昨日落選したけど、残らなくて良かった」
「いけいけ!村上ーー」
無責任な言葉たちが飛び交っている。
川中も覚悟を決め、その冷たい銃口を村上に向けた。
心配そうに二人を見守る村上のファンの子たち...。
「今すごい戦いが行われています。ーー勝てば結婚、負ければ死。彼らはどうなるのか?」
流石、テレビ関係者だ。
煽るのが上手い。
視聴者の関心は今この勝負に釘付けだろう。
そんな時。
引き金に指をかけたまま、村上が声を発した。
「すいません」
「どうしました?」
スタッフが駆け寄る。
「あの、、銃ってコレを手前に引けばいーんだよね?」
引き金に指をかけて聞いた。
「そうですよ。撃つと多少反動があると思われるので、気をつけて!!」
ーーそんな事を言われたら、余計に撃つのが怖くなるだろう。
長沢洋子は二人の顔を見比べて言った。
「あまりにも進展しないため、制限時間を作らせて頂きます!なお、制限時間は15分とさせて頂きます。ーー早く私に見せてくれますか?殺人のその瞬間をーー」
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