リリー52(十七歳)
あの威圧的な王様のこと、
そうなんだよね。
なにもしてないくせに、最後に境会の奴らに全てを押し付けて捕まえたって聞いた。
新聞では、王様が戦争中に
うちのパピーをお城に閉じ込めたりもした。
まあでも、身内の噂話では、パピーのお城での拘束は牢屋の中とかではなくて、普通に部屋でお茶してたって、いつも通りに書類見たり本読んでたって聞いている。
だからといって、更迭とか拘束とか、私も軟禁されたことは忘れていない…。
それも含めて、学院に行ってグーさんにクレーム入れる。
そんなわけで乗り込んだのは学院の執務室。すると私よりも先に、白兎がグーさんの部屋から出てきた。
「……」
「……」
入れ替わりに入った執務室。そこには、兎に文句を言われて疲れた顔のグーさんがぐったり座っていた。
だから少しだけ、お小言は減らしてあげたの。
婚約破棄もしっかり出来た事だし、めでたしめでたし。
早めに出てあげた執務室。実は色々ルールが変わって、あの長ーい廊下はメイヴァーさんと二人で歩いて来たのだけれど、帰り道で白兎が待っていた。
** **
学院裏の森から出ると、王城から王警務隊の出迎えがあり、そこで満身創痍のダナーの者達と別れた。
教会の術士や医務官の治療を受けて向かった先は、アトワの大公が拘束されていたという王城の別棟。
父親の無事を確認したフィエルだが、経緯の報告に出た大公令嬢の名前に、アトワの大公はふと息子の顔を見た。
「リリエルと言ったな?」
「……? はい」
「我らに借りを作った国王が望むものを与えると寛恕を求めてきたのだが、
「……グランディアとの婚約破棄…」
「愚かでもあるが、面白くもある」
珍しく笑みを浮かべた父の顔。それにフィエルも同じ赤色の瞳を瞬かせる。
「見た目はよく似ていると聞くが、
「……はぁ、まぁ、はい。観察しておきます」
「……」
子供の頃にも見せたことはない、父の言葉に歯切れ悪く不満げに答えた息子の顔。大公は、今度はそれに歯を見せて笑った。
**
その日、登校すると授業はなく、中庭には大掛かりな厨房が組み立てられた。
制服の色に関係なく集められた生徒たちは、左右の戦勝会と称された会場で、振る舞われた焼肉を堪能する。
「何で私が貴方に送った
不満げに頬を膨らませたリリーは、通りすがりの生徒に肉の礼を言われて反射的に微笑み返す。
「おまけに主催者の一人にされてる」
「あの臭い肉を
「うむ。悪くなかったわよ、
「そもそも、どこかの誰かが、保管出来ない大量の生肉を、考えずに私に送り付けてきたからこうなったのだ」
「それはこの前の森でのお礼だったのよ。今年はあんまり捕れなかった、貴重なお肉を送って差し上げたのよ。これで貸し借りはなしよね」
にっこり笑ったリリーに沈黙したフィエル。二人の背後には、眉間に皺を寄せたラエルと瞑目するメイヴァーが控えている。
「……はぁ」
溜め息に視線を生徒たちで賑わう中庭に向けたフィエルは、ふと父の言葉を思い出した。
「父上が、大公によく似ているか、生意気なお前の顔を見たがっていた」
「…………父上?」
「なんだ?」
『親兎?』
「貴様、今、田舎の方言で我が父上を侮辱したな?」
「していない。これは想像の印象よ」
リリーがやましく直ぐに否定した。それに気付いたラエルは身を乗り出す。
「令嬢、よくも我が大公閣下とフィエル様を
「
「私には聞こえました! ね、フィエル様!」
「……いや、方言は、はっきりとは聞こえなかったが」
「え?」
「ええ??」
顔を見合わせて驚愕するリリーとラエルに、赤い瞳はスッと眇められる。それにメイヴァーは軽く鼻から溜め息を吐いた。
☆☆☆☆☆☆
リリーVSフィエル
親密度 20 VS 15 親密度
自慢度 100 VS 100 自慢度
イライラ度 95 VS 80 不満度
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