リリー40 (十七歳)
ファンくんとの出会い、ピアンちゃんとのお友達復活。
なのに楽しいはずのお茶会を台無しにしやがったよね、あのプライベートの侵害者。しかもうちの支払いにケチつけて、レシート確認なんてあり得ない。
ファミレスじゃないんだよ。ここはお洒落なカフェなのに。レシートなんか、
意外な事に、奴らに意見してくれたのはピアンちゃんだった。
やっぱりお家が商売しているだけあって、難くせ悪質クレーマーの取り扱いに慣れている。訴えてやるって言って追い払ってくれた。
損害賠償って難しいこと言ってたよ。
かっこいいよね、専門用語。
でもその後で、ピアンちゃんから奴隷に関するあれこれは、スッキリ簡単には辞められないって説明された。
そうなんだよね。こういう非人道的案件て、被害者が簡単に救われないのは過去世でも経験済み。
元をなんとかしないと、結果が出ないのも理解できる。
(となると、やっぱりグーさんのお父さんか…)
強権力の保持者である、うちの両親が唯一ペコリとしなきゃならない相手、国王。
(あ、ピアンちゃんの前で、陛下ってつけるの忘れてたな。…まあいいか。ピアンちゃんも王って呼び捨てしてた気がするし)
歴代の王様の中でも温厚で、穏健派で、今までで一番、右と左のバランスを保っているらしい。
きゅるんフィエルも言ってたけど、第四王妃は
更にその子供のグーさんと、
(温厚なら、奴隷もやめましょうって言ったら、聞いてくれるのかも…)
とは思ったものの、なぜ温厚なのに、非人道的事業をやめない事も気になるよね。
グーさんも、いくら身内に不正が発覚したからって、王族だけではなく一般生徒も巻き込んで、学院内に王警務隊ってプライベートの侵害達を放し飼い。
(なんか……、一言いってやりたくなってきたな)
その奴隷事業とプライベートの侵害の許可、
親子揃って、やむを得ずやってるの?
それともまさか、現在世でも、私達には分からない、ルールブックが存在していて、それに従わないと動けないの?
どう見ても助けてあげないといけない人たち、なんで率先して助けてあげないの?
なんの為に、使わないで権力持ってるだけなの?
(…………)
そうだよね。やっぱり言ってやろう。だって私は悪役なのだから、他の人が王族の奴らに言いにくいこと、空気読まないで言ったっていいはず。
喫茶店から帰りの馬車の中で、もんもんと考えていた私。屋敷に着いて驚いたのは、ニューフレンズも一緒に帰宅していた事だった。
ファンくん、どーしたの!?
お家が遠いって?
なら家にお泊まりしていきなさい!
幸いにも、上の兄貴の許可は直ぐに下りた。私がビーエルタグを貼り付けている、ローデルートさんが頼み込んでいたから。
程なく帰ってきた柄が悪い方のメル兄貴。なぜか小綺麗な格好でファンくんの前に王子の求婚の様に跪き、自分の自己PRし始めた。
(……なにこれ……)
上の兄貴と従兄弟のローデルートさんに関しては、半分冗談でビーエルタグを貼り付けたけど、七歳のファンくんに求婚ポーズって笑えない。
自分発信ではない、自分が何者かも理解していない年齢に、同性愛への導きは多様性と言えるのだろうか。
男らしさの強要とか、女らしさの強要じゃなくて、同性異性、どっちを好きになるかの導入部分て、それこそとってもデリケート。
まさか下の兄貴がそんな事をするとは思っていなかった。
その衝撃が顔に出ていたみたいで、メルヴィウスは自己紹介が終わると私の微妙な表情に首を傾げていた。
あれ? 現在世って、求婚に跪くとか、そんなルールは無かったかな?
騎士レベルが跪くって、それは目上の人にだけの話で、
ならばつまり、下の兄貴に対する、ショタ疑惑と多様性乱用疑惑が深まった。
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