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(ようやく、ここまで来た……)
蒸し暑い気温、鬱蒼とした森を幾つも通り抜け、自分の位置が分からなくなっている。
時折聞こえるのは、羽ばたく音に、聞いた事が無い生き物の鳴き声。
湿度に息苦しく流れる汗を拭い、伸びてきた金色の髪を軽く括る。用意した水が底をつき、後は気力だけで進むしかない。
「もう直ぐです」
案内人がいなければ、街に戻れる自信がない。
道なき深い森の奥、突然拓けた場所に、大きな湖と石造りの神殿が現れた。
(ここが
高床式に造られて、神殿を支える柱は半分湖に浸かっている。長い階段を上ると、入り口に少年が待っていた。
「遠路、よくお越しくださいました」
神官服に身を包んだのは、珍しい淡い翠の髪色に、ピンク色の瞳の少年。
(確か、今年で六歳になられるはず…)
セオルを興味深く見つめる利発そうな眼差し。案内の者を労って下がらせると、「こちらです」と神殿の奥へと進んで行く。
光と闇が交差する円柱の回廊。その先には、二人の神官が立っている。
突然元気よく走り出した少年神官は、二人に抱き付き纏わり付いた。その姿を慈しむ様に見つめた男女の神官は、呆気に取られて見ていたセオルに微笑んだ。
「待っていました。
「語りましょう。
**
限られた時間はあっという間に過ぎ去り、二人の神官にセオルは深く頷いて立ち上がる。
だがここまでの息苦しく長い道のりを思い出して、内心でため息したセオルの背に、救いの手が差し伸べられた。
「…この、円の内側に立つのですか?」
祈りの間の奥の部屋。その床には円に紋様がびっしりと描かれている。
「はい。強く、今一番会いたい人を、頭の中に思い浮かべてください」
「……」
訝しむセオルの手を取り、円の中央に誘う。二人の神官は「大丈夫、その人を信じて、強く、思い浮かべるのです」と微笑んだ。
**
『ごめんごめん、今日は人にぶつかる日みたい』
ぶつかってはいないが、驚いて立ち竦む生徒の黒色の制服に目を見開く。そしてその顔を覗き込んだ。
『やっば、リアルってスゴいね。超絶美人さんじゃん』
言われたリリーは、何の事かと
『……教えてあげとくね、貴女の不幸。このまま行くと、奴隷に売られるよ』
『……』
『…確か、異国の富豪に買われるとか、そんな感じだよね』
『……』
『ふふっ、そんなに美人なら、きっとキモいおっさんにエロいことされるんだよ、残念ー』
『……』
『でも貴女ついてるよ。
『……奴隷?』
『そうだよ、奴隷。まあでも、奴隷回避したいんなら、念のため、あの子には近寄らない方がいいかもね。あの子、見境なくなりそうだし』
『…何を言って、いるのかしら。あの子って』
『お勧めは、……やっぱり無難に王太子か白の貴公子。でも白の貴公子モラハラだから、王太子にしときなよ。
リリーの言葉など求めていない女は、限られた時間の中で一方的に思った事を口にする。そして急いで中庭に向かうために、適当に話を切り上げた。
『じゃーねー! 悪役頑張ってー!』
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