第参章 仲間探し
福陵
ーあの日、俺の人生が一転したー
ーそして、俺の人生がガラリと変わったー
五行山(ゴギョウザン)を後にした三蔵(サンゾウ)と孫悟空は天蓬(テンポウ)と捲簾(ケンレン)を探す為、観音菩薩(カンノンボサツ)から聞いた場所に向かっている途中であった。
船乗り場で三蔵と孫悟空は船が到着するのを待っていた。
孫悟空ー
「それで?最初はどっちに行くんだ?」
俺は地図を見ている三蔵に話し掛けた。
「んー。2人の居場所が真逆の場所なんだよなー。ここから近いのは…天蓬がいる福陵(フクリョウ)かな。」
「福陵?ここからどれくらい掛かるんだ?」
「そうだな…。早くて20日、遅くて…。」
「いや…、もう言わなくて良い。」
三蔵の反応を見て、ここからかなり掛かるのが分かった。
「あ、そうか?」
三蔵はそう言って地図を荷袋にしまい、海を眺めた。
コイツの親も牛魔王(ギュウマオウ)に殺されたんだったな。
「実感が湧かないんだよなぁ。」
三蔵が海を見ながらボソッと呟いた。
「何が?」
「悟空とこうやって旅をする事になった事が。」
そう言われてみると確かにそうだな…。
「俺はさ?親を牛魔王に殺されたんだけどさ。」
「あぁ。」
三蔵は煙管を取り出し口に加えた。
慣れてる吸い方だな。
「お前、煙草なんか吸うの?坊さんの癖に。」
俺は軽く笑いながら三蔵に尋ねた。
「お師匠の真似。それに受けた仕事はキッチリやるから良いんだよ。話戻すけどさ、それから俺はお師匠に拾われてさ?まさか本の中の人物とこうやって旅をする事になった事が不思議でたまらない。」
そう言って三蔵はフゥッと煙を吐き出した。
「夢物語みたいって事か?」
「そう!!それだ!!」
三蔵は子供のようにはしゃいでいた。
普段は大人びているのにやっぱりまだ、19のガキなんだな…。
「お前の読んだ本は全て実際にあった事だ。今のお前はその本を書いた事すら覚えてねぇけどな。」
「俺が書いた…?」
俺の言葉を聞いた三蔵はキョトンとしていた。
「良いか悟空。金蝉(コンゼン)には前世の事は話すな。」
ふいに、観音菩薩の言った言葉を思い出した。
これ以上は言わない方が良さそうだな。
「何でもねーよ。」
「何だよ?途中で話を終わらすなよ!!」
三蔵はそう言って俺に近付いて来た。
「うるせーな!!耳元で騒ぐな!!ほら、船が来たぞ。さっさと乗るぞ。」
俺はそう言って歩き出した。
「あ!!こ、こら!!待てよ!!!」
三蔵が後ろから慌てて走って来た。
孫悟空と三蔵が船に乗り込んでから25日が経った頃、乗客達は"ある話"に花を咲かせていた。
源蔵三蔵 十九歳
俺と悟空の前で数人の男達がはしゃぎながら話していた。
「後、3日で福陵に着くらしいぞ。」
「本当か!?やっと着くのかぁ!!お前、どれくら
い持って来た?」
「俺はなー。」
男達は小さな袋を開けながらが楽しそうに話している。
「何をあんなに盛り上がってんだ?なぁ、悟空。」
俺はそう言って隣で俺の煙管を吸っている悟空に話し掛けた。
「あ?知らねー。」
「なんかすごい盛り上がってんだよ。ここの乗客達がさ。」
俺達を含む数十人の乗客達は全て男だった。
乗客達の服装はかなり高価な物ばかりで、見るからに金を持っているオーラを放っていた。
「あ!!貴方はもしや源蔵三蔵殿ではありませんか!?」
俺の目の前で話してた男の1人が俺の事を見て声を上げた。
「これはこれは!!源蔵三蔵殿がどうしてここに?」
「色々と用事がありまして。」
俺がそう言うと、話し掛けて来た男がニヤリと笑った。
「成る程。源蔵三蔵殿も"桜華(オウカ)"に向かっているのですね!!」
そう言って男は俺に近付こうとして来た。
ガシッ!!
悟空が近付こうとして来た男の肩を掴み俺から距離を離した。
「近い。」
「す、すみません!!いやー、流石は源蔵三蔵殿は付き人も優秀な方を選んだのですね!!」
「は、はぁ?」
男の言葉を聞いた悟空は呆れた顔をした。
俺は悟空が褒められた事が嬉しかったので、男に話し掛けた。
「そうなんです。いつも助けられてます。それで?桜華と言うのは何ですか?」
俺がそう言うと、少し太った男が近付いて来た。
「私が説明致します!!桜華と言うのは福陵で1番大きい花街(カガイ)の事ですよ!!」
花街…?
「ご、悟空。」
俺は小声で隣にいた悟空を呼んだ。
「何だよ。」
「か、花街って何?」
「……は?」
そう言って悟空はポカーンッと大きな口を開けた。
悟空は俺の顔を見てニヤニヤし始めた。
「そうかー。お前はまだガキだもんなぁ?そりゃあ知らねーよなぁ?」
な、なんか馬鹿にされてる気がするんだけど!?
俺、そんな可笑しな事を聞いたのか!?
1人で困惑していると、悟空が俺の耳元で囁いた。
「花街って言うのは。男が女を買って寝る事だよ。」
男が女を買う?
そ、それって…。
も、もしかして…。
ま、ままま目合(まぐあい)!?
*目合い… 性行為の事*
俺の顔が赤くなって行くのが分かる。
悟空は俺の事を背中に隠すように男達の前に立った。
「へぇー。それでアンタ達は盛り上がってんだ。」
「そうなんです!私達は桜華一の妓院の音華(オバナ)に会いに来たんです!!」
「「お、音華?」」
俺と悟空は声を揃えて男に尋ねた。
「知らないんですか!?音華は桜華一の絶世の美女と言われている妓院なんですよ!?」
「音華を落とす為に数々の男達は大金を積んでいるんですよ?」
男達は鼻息を荒くしながら話していた。
「へ、へぇ…。」
悟空なんて、男達を見て引いてる様子だった。
確かにこれは…引くわ。
「福陵に行くのでしたら是非、桜華に寄ってみて下
さい!!」
「あ、あぁ…。」
「それでは失礼しますね!!」
男達はそう言って俺達の側を離れて行った。
「な、なんだったんだ…アイツ等は。」
「音華目当ての男達って事じゃねーの?多分ここにいる乗客達は桜華に行く為に来た客達だろうよ。」
悟空はそう言って周りを見渡した。
俺も悟空と同じように周りを見渡した。
確かに、ここにいる奴等の殆どは桜華や音華の話をしている。
「しっかしお前が花街の事を知らねーとはなぁ。まぁガキは知らなくて良い世界だな。」
悟空はそう言って鼻で笑って来た。
「な、なんだよ!?馬鹿にしてんだろ!?」
「アハハハ!!馬鹿にして…アハハハ!!」
悟空はお腹を押さえながらゲラゲラ笑っている。
こ、この野郎!!!
「お前も普通のガキなんだなって思っただけだよ。拗ねんな拗ねんな。」
「べ、別に拗ねてねーし!!!」
俺はそう言って悟空の背中を叩いた。
それから3日後、三蔵と孫悟空を乗せた船は無事に福陵に到着した。
福陵ー
孫悟空と三蔵が船から降りると、目の前には大きな門が立っていた。
福陵に入ろうとしている人々は一列に並び門番に検問を受けていた。
列に並んでいる人の殆どは男だった。
孫悟空と三蔵は自分達の番が来るのを大人しく待っていると三蔵の存在に気付いた門番が直ぐに福陵の中に案内してくれた。
孫悟空はこの瞬間、三蔵は本当に偉い坊さんなのだと実感した。
こうして天蓮を探す為、孫悟空と三蔵は何の問題もなく福陵に到着したのであった。
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