第22話 『ガニメデ』

ガニメデで待機しているMWコーポレーションの上級メンテナンスクルーは、パイソンのピットインと、自動燃料補給ロケット打ち上げの両方の準備を進めていた。

自動燃料補給ロケットは、切り離し不可の通達が出てしまったが、使用自体は可能だ。

パイソンの意向次第だが、既にいつでも運用出来る状態に仕上がっている。



ガニメデの惑星改造テラフォーミングにはかなりの時間がかかったが、今では地球と似た大気も形成され、火星ほどではないにしろ、多数の企業がガニメデへと進出し、太陽系内でも有数の賑わいを見せている。


氷や水の存在がガニメデ探査機によって確認されたことで、惑星改造テラフォーミングも捗り、人類が早い段階で定住出来るまでになったのは幸運だった。それによりチェイス・ザ・ギャラクシーの中継地として運用も出来るようになったのだ。


「こちらガニメデのメンテナンスチーム。パイソンからの連絡が届き次第、迅速に行動出来るよう、待機中です」

MWコーポレーションのメンテナンスクルーが、地球にいる司令塔へと無線を入れた。


「了解した。パイソンのことだ。きっと自動燃料補給ロケットを使う判断をするだろう。滞りなく進めてほしい」


「畏まりました。自動燃料補給ロケットの準備は万全です。いつでも発射出来ます」


「分かった。だが一つだけ確認したい。自動燃料補給ロケットを活用し、それを切り離しをせずに接続ドッキングしたままでは、レースに支障が出やしないか?」


「我々としても、なんとも言えません。自動燃料補給ロケットを使用した場合、ピットインするはずだった時間は確かに無くなりますが、切り離しが出来ないとなれば、結局は余計な荷物・・を背負ったまま飛び続けることになります。地球への帰還途中にまた小惑星帯を通過しなければなりませんし、自動燃料補給ロケットを接続ドッキングしたまま飛行するという訓練を、パイソンは全くしておりません。ロケットボートとパイソンの間で、微妙な感覚のズレが生じた場合、大事故に繋がる可能性を秘めています。我々としましたら、安全の面でもピットインをした方が得策になるのではないかと考えております」

メンテナンスクルーは進言した。


確かに自動燃料補給ロケットを接続ドッキングしたまま飛行するなどMWコーポレーション司令塔も想定していなかったので、そのような訓練は一切してきていない。

二回目の小惑星帯突入時、万が一ロケットボートと小惑星が接触した場合、いくらその時点でトップに立っていようと、レース続行不可能になりかねない。


司令塔は頭を悩ませた。

どちらの策が良いのか、分からなくなってきた。


あとはパイソンがどう判断を下すかだ。

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