ゴーストハウス評論家のゴーストハウス(おっさんじゃないほう)

神澤直子

第1話

 僕の職業は所謂、ライターと言うものである。雑誌やネットに様々な記事を寄稿する。フリーライター。売れっ子になるとそれなりに稼げる仕事のようではあるが、今の僕は全然で生活もカツカツな状態だ。

 そんな僕に、ある日面白い仕事が舞い込んだ。

 有名オカルト紙からの依頼で、東京都新宿区にある廃墟にお化けが出るらしい。そこを取材して記事にしてくれないかと言うのである。

 幽霊屋敷--ゴーストハウス。

 幽霊というものを信じているかと言われると、きっと僕は信じていらわけではないのだが、編集者の方とあって、渡された一枚の写真からは妙にずしんとした圧のようなものを感じた。きっと、「幽霊屋敷」と思って見ているからだとは思うけれども、なんとなく普通ではない、そんな雰囲気。

 そんなこんながあって、僕は今日、取材を兼ねてこの幽霊屋敷に突撃することになったのだ。


 もちろん、一人でとは言わない。

 今回、なんと松永由紀子さんと言う、割と有名な霊能者の方が一緒に着いてきてくれることになった。

 松永さんはよくテレビにも出ている霊能者だ。曰く、「私は霊を見たり自分の身におろしたりする霊媒だけど、除霊をしたり霊を排除するようなことはできない」とのことだった。除霊ができないと言うことは、僕の身を守ってもらうことなんて出来ないわけで、結局霊がそこにいるかいないかと言うことにしか興味のない編集部の横暴なのだが、それでも僕一人で入るよりも少しだけ心強いような気がする。

 それに、ここだけの話だが、松永さんは美人で独身。どうやら恋人もいないようである。不肖の独り身である僕はちょっとだけロマンスを期待してしまったりもしている(お化けが出てきて抱きつかれちゃったりなんてことを思うけど、慣れてるだろうし、たぶんないよなあなどと)。


 そんなこんなで、僕らは新宿のとあるカフェで待ち合わせをして、現場へ向かう。

 実際に会った松永氏はやはり美人だった。

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