第7話 は?

「ハア~ツ!

お前達もはいれ~!!

サッパリするぞ!!」

一郎太がそう言うと



学生達はパパパと裸になり4人

一緒に風呂場に消えた。



「あれっ、美奈は?」


一郎太はキョロキョロと

美奈がいない事に気づき

目で探した。


エプロンをつけて食事の用意を

始めた台所にいる恵に聞くと



「さっき、海斗と話してたみたい

だけど買い物じゃない。」


「そうか?」


寿司飯を手際よく混ぜている

横から酢の香りが鼻に漂って

くる。

フ~ン今日は何作ってるの?」

恵の後ろに回り込み鍋を覗き込む。



「学生、沢山食べるから、

手巻き寿司

     と

お味噌汁

茶碗蒸しとポテサラだよ。


あっ!海苔が足りないかも」



「じゃあ、スーパーで買って来るよ。

君の好きな和菓子も

老舗で買ってくる。美奈も食べるか

もしれないし沢山いるな!」



「有り難う。ねえ…!!この間は

 ごめんなさい。

 少しの火遊びだったの、やっぱり

 私には一郎太が・・・。」



「もう止めよう。

 俺達は終わったんだ。

 恨んでなんかいないから・・・

 安心して・・・」



「ねえ!ちゃんと聞いて、

あれは・・・。」



「先生~先生ひげ剃りある?」



 

学生の声に一瞬会話が止まり


「ひげ剃りは棚の一番上の青い

  箱のなかよ~。」

恵は、振り返り声をあげる。



恵は、一郎太の彼女だった。


もう2日前まで、の事だ。



家の何処に何があるか一郎太より

恵の方が詳しいのは仕方がない。

何もかも恵が仕切っていた。



学生達は冷やかしながら


 「さぁすがぁ~奥さん」


と全員浴室から顔を出し、

ニヤニヤしながら見ていた。



恵と一郎太が近くに居たから

誤解したらしい。



「じゃあ、出てくる。そこの

スーパーだからなんか要るの

合ったら、 電話して。」




一郎太はスーパーを、一回りして

ビールと摘みを、買って店を、

出た。




一方、突然の彼女解雇

みたいな扱いを受けて

しまった美奈は?



今日は野宿だな!



スーパーのパン売り場で割引に

なったイチゴジャム入りのパンを

チョイス



一個60円と暖かい珈琲を持ってレジ

に並びながら

今日の塒を考えていた。



公園、駅、寒いよね!! 

でも漫画喫茶は・・・

ネカフエは多少なりともお金いるし、

あれ、あれ、あれ~っ?

しまった( ꒪Д꒪)ヤバ…

財布の中に小娘に似合わぬ

ブラックカード!!アヒヤー


カードもったままだ、返さないと、

駄目だ、今は帰れない

一郎太の、彼女いるし・・・

警察に持って行こう。


明日先生が仕事に出た頃がいいな。




一郎太はマンションから1キロ程離

れた和菓子屋 梅ノ花へ向かった。



恵の好きな 梅大福を一箱

美奈の好きそうな梅おはぎと鶯谷餅

をー箱購入した。




美奈の喜んだ顔を思い浮かべ

デレーツとなりそうになり

ンッんんと咳払いをする。



店の大将に

「良いことあったんでしょ。」

と含み笑いを浮かべられる。



おれの幸せは、溢れてしかたが

ないようだ。


照れ隠しをしながら


早く美奈に食べさせたくて家路を

急ぐ。




カチャリと玄関が開く音がすると

学生が飛んできて




「言ってくれたら、俺達買いに行き

ました よ、すみません。」

   


「気にするな!

 俺も美奈に食わせたい、菓子

 があつたしな…。」

その一言に恵の手が止まった。


「一郎太、それでお菓子屋さんまで

 いったの?あの子の為なの?」



「うん、美奈は俺の大事な・・・」


「え‼」


恵は、自分の為に行ってくれたの

だとばかり思いこんでいて、軽い

ショックを受けた。



「ああ、そうだ美奈!美奈!

どこだ?」



一郎太は美奈の部屋まで行って

ノックを二回した。

それを見た海斗は一郎太に

声をかける。


「ああ、先生、彼女なら帰りまし

たよ・・・!」



その声に振り向いた一郎太の顔から

サーサーサーツと血の気が引いた。


「い、いつ、いつだー、」


仁王立ちになった一郎太の顔は

般若そのものだった。



「海斗が聞いたのか?」



怒号のような声に全員が固まった。



 「さっきマンションの下で

  あった時‥デ‥ス‥ガ。」


「は?」


「え、あれ?先生のお兄さんが

迎えに来たって言ってましたよ。」



「兄貴?誰だそれ?」



「・・・先生の兄貴でしょ!!」



 ・・・は?

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