第26話 ぬらりひょん

 ~ぬらりひょん……特徴的な形状をしたはげ頭の老人で、着物もしくは袈裟を着た姿で描かれている。解説文が一切無いためにどのような妖怪を意図して描かれたかは不明である。昭和・平成以降の妖怪関連の文献や児童向けの妖怪図鑑で「ぬらりひょん」は、家の者が忙しくしている夕方時などにどこからともなく家に入り、茶や煙草を飲んだり自分の家のようにふるまう。家の者が目撃しても「この人はこの家の主だ」と思ってしまうため、追い出すことはできない、またはその存在に気づかないと解説されている。また「妖怪の総大将」であると解説されることも多い。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋~


 今日は小学生界隈では鉄板行事であるお誕生日会です。本日の主役ですが、私達女子はおろか、男子も含めたクラスメイトの中心人物と言っても過言ではない、人気者のAちゃんのバースデーなのです。そんなAちゃんの自宅に招かれた次第です。


 Aちゃんは所謂いわゆる超が付くお嬢様でして、お金持ちであるが故に兎角浮世離れしているのです。何せこの日だって、こうしてクラスメイト全員を招待しちゃう程ですから。


 そして、Aちゃんは私達に対しても、セレブリティである事を自慢したり偉ぶる事も一切無く、それこそ誰とでも気さくに接し、尚且なおかさま仲良くなってしまうものですから、他クラスの生徒にも大勢のファンが居るレベルです。


 そこへ持ってきて、Aちゃんは相当天然女子な性格も持ち合わせておりまして、これが男子のみならず、女子にも「カワイイ」と思わせる魔性っぷりでしてね。中には男女問わず、本気でAちゃんに恋をしちゃっている人も多数いる模様です。


 そうでなくとも、Aちゃんは本当に裏表がなく優しい良い子ですので、最早Aちゃんを嫌う理由は皆無ですし、誰しもから慕われるのも自明の理で御座いましょう。


 さて、Aちゃんの豪邸の前にて、私が代表してインターホンを押しますと、Aちゃんが元気な声で「みんないらっしゃーい♪どうぞ入ってー♪」との応答の後に、自動で大きな門が開き、私達一同は家の敷地内へと歩を進めます。


 広い庭を抜け、やっとこさ辿り着いた玄関に私達が到着すると、Aちゃんが満面の笑みで迎えてくれました。これなるAちゃんのスマイルで、改めてクラスメイトの数名は骨抜き状態です。


 そうして屋内に案内されまして、これ又だだっ広いリビングルームに通されますと、ビュッフェスタイルの豪華な料理が並べられているのが目に入ります。男子の何人かはガチンコで涎を垂らしておりましたが、私自身も思わずお腹が鳴ってしまう位には美味しそうであります。


 そんな折に、一人のお爺さんが忽然とリビングに姿を現したのです。併せてそのお爺さんは、何やらせわしなく動き回っている御様子です。


 ややあって、お爺さんは私達の存在に気が付きますと、「ああ、皆様いらっしゃいませ。わしはすぐに外出しますので、どうかお気になさらずにお続け下され」と言いつつ、大量の荷物をまとめる作業に専念するのです。


 するとAちゃんはクスクスと笑いながら「んもう、お爺ちゃんったら大丈夫? そんなに一人で持ち運べるの♪」の問いに、お爺さんは「てやんでぇ、やらいでか」と微笑みながら答えるのです。


 なるほどですね。恐らくこちらのお爺さんは、Aちゃんの実の祖父なのでしょう。これから何処どこぞにお出掛けと言った所かしら。


 そうやって手際よく支度を整えましたお爺さんは、「それじゃあ、儂はこれにて失礼致しますですじゃ。皆様も引き続き宴会を楽しんで。それと、これからも何とぞAちゃんと仲良くしてやって下さいませね」と言い残し、そそくさとこの場から立ち去ってしまいました。


 私は「優しそうなお爺さんだね」とAちゃんに話し掛けますと、Aちゃんからは意外な言葉が返ってきました。


「ふふ、実はね、お爺ちゃんと言う設定を貫き通せってきつく言われていたのね♪それで、お爺ちゃんがこの家から退出した暁には、奥のキッチンで拘束されているパパとママを解放しに行って良いからって約束していたの♪やーん、初めてだから緊張しちゃったよ、押し込み強盗」

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