第17話  希和と母

自宅でパソコンの画像を見ていた。

「ただいま!、希和帰ってたのね」

「うん」

「あら、パソコン買ったの?」

「ううん、もらった」

「誰から?」

「天空カフェの人達」

「そう、いつかお礼に行かなくちゃあね」

「大丈夫だよ、お店をたまに手伝ってるし」

「アルバイトもさせてもらってるの?」

「うん、忙しい時は」

「やっぱりお礼に行かなくちゃあ」


「お母さん、これ見て……」ゲームキャラクターの画像を見せた。

「あら、可愛いわね、このコスプレをするの?」

「したいと思ったんだけど、この衣装は難しすぎるよね」

「そうね………でもやりたいんだったら衣装作りは協力するわよ」

「ホント!」

「なんか懐かしいわ、こんな衣装を作るなんて」

「お母さんはステージ衣装を作ってたんでしょう?」

「えっ……」

「美奈さんが言ってた」

「そうね……もう随分昔の話だけどね」

母さんは少し寂しそうな顔をしたので、それ以上は聞かなかった。


「かなり大変だけど、面白そうね……普通は使わない生地や素材が要るわね」

私が選んだゲームのキャラクター『マリン戦士アクア』は鱗のような飾りの戦闘服と全体に水をイメージしたブルーの衣装が絶妙に組み合わされたコスチュームだ。

「それに、持ってる剣と盾はキラキラ光って、作るのは無理かも」

「そうね、そっちは私じゃあ無理だわ」

「でも……小道具も大事よね……多分」

「そうね……」

しばらく考えたら、ふと隠れ家の工具がある部屋を思い出す。

「そうだ、友希さんに聴いてみよう、色んな工具を持ってるし」

「一瀬さんの事?」

「うん」

「彼にもお礼を言わなくちゃあ、嵐の夜に泊めてもらったお礼をね」

「大丈夫だよ、希和が御礼言っとくから」

「そう、でも………一度会ってお礼が言いたいわ」

「うん、たまにホームセンターに来るから、その時家に寄るよ」

「お願いね」

「うん」

「母さん、私なんか楽しみになってきた」

「そうね」母も少し嬉しそうだ。

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