第16話 綾乃と希和

金曜日に天空カフェへ来ていた。今日は団体のバーベキューが入っているので忙しい。私もこんな忙しい日にはアルバイトさせてもらっている。

「希和ちゃん、これをバーベキュー場まで運んで」

「はーい!」お肉や野菜、サラダなどを運ぶ。

新さんは火おこしをしている。

綾乃さんは焼き方や美味しい食べ方などを説明している。

始まってしまえば、後はみんな自分達で焼くので大丈夫だ、

後片付けの時にまた手伝う事になる。


一段落したので、3人でお昼を食べる事になった。

千草さんの作ってくれたまかないを食べる。


「私コスプレでどんなキャラをやるか考えてるんですけど……」

「そう、希和ちゃんは可愛いから何でも似合いそうだけど」新さんが微笑んでくれた。

「サークルの意見で美少女戦士的なやつが良いって言われたんですけど………」

「どうしたの?何か心配なの」綾乃さんは優しそうにこっちを見ている。

「私………胸があまり大きく無いから……胸元が……」

「そんなのパット入りのブラにしたらいいじゃん」

「えっ?」

「私も胸元にボリュームが欲しい服の時はパット入りのブラにするよ」

「そうなんだ………でも……どこに売ってあるか……」

綾乃さんがニッコリと微笑む。

「私に任せなさい」そう言って新さんのパソコンを開いた。


「やっぱりネットの通販サイトよね、こんな時は」

いつもと全く違う可愛い綾乃さんが姿を表す。

「ほらほら!こんなにいっぱいあるでしょう?」

画面には沢山のブラが表示された。

「そうか……ネットショッピングが出来たら色々買えるんですね……」

「希和ちゃんパソコン持ってないの?」

「はい……」

「新さん使ってないノートパソコンはないの?」

「有るよ、良いのが」

「じゃあ希和ちゃんにあげたら」

「いいけど」

「じゃあ取りに行ってよ」

「今すぐに?」

「見て分かんない……可愛い女子二人がブラを選んでるのよ、空気に何て書いてあるかしら?」

「ですよね〜!」

新さんは急いで自宅へ向かった。


しばらくすると新さんはシルバーの薄いノートパソコンを持ってくる。

「これならどこでも持っていけるし、高卒認定の勉強もやりやすくなると思うよ」

「えっ!こんなに綺麗なのをもらって良いんですか?」

「ああ、いつも新しいパソコンが出ると綾乃が買ってくれるんだ、だからまだまだ使える良いやつだよ」

「だって、新さんにはいつも良いのを使って欲しいし」綾乃さんは優しそうに新さんを見ている。二人はとても仲が良いんだと改めて思った。


「そうだ、設定を希和ちゃん仕上げに変更するから、暗証番号を決めて」新さんは持って来たパソコンを開いて聞いてくる。

「アルファベットと数字を組み合わせたものが必要だよ、絶対に忘れないやつ」

「えっと、kiwa5633がいいです」

「はいな」新さんは設定らしき事をやっている。

「希和ちゃん5633って何なの?」

「はい、友希さんのバイクのナンバープレートの数字です」

「そうなんだ」綾乃さんは笑った。

「5633ってピアノで言うとソラミミなんですよ」

「へーそうなの?」

「ドが1度でレが2度で……」だからソラミミ、空耳なんです。

「なるほど、友希くんは知ってるのかなあ」

「友希さんには教えないんです」

「どうしてなの?」綾乃さんが不思議そうに聞いた。

「空耳だからバイクの後ろに乗って抱きついてる時に『好きだ〜!』って言っても空耳になっちゃうから」

「な・る・ほ・ど・」綾乃さんは含み笑いをした。

「どうして希和ちゃんは5633を空耳だと気が付いたの?」

「昔ピアノを習ってたから、これでも絶対音感が有るんですよ」

「そうなんだ、すごいね希和ちゃん」新さんは驚いた。


バーベキューの後片付けも終わり夕方になった。

「このまま隠れ家に泊まれるといいのになあ」

「あら、まだ友希さんは鍵をくれないの?」

「そうなんです」膨れていると

「希和ちゃん、それは大切に思ってくれてるからだよ」

「そうなんですか?」

「そのうちにきっと『はい、これ持ってな』そう言って渡してくれるよ」

「だったらいいなあ」

私はバイクのエンジンをかけ二人に手を振って帰った。

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