第14話 2人で迎えた朝

朝になって空を見ると、綺麗な青空が広がっている。

前の小川は水量が増えて、少し茶色だ。

下へ降りると、希和はすでに起きてJKに変身していた。

予備の歯ブラシを出してやると、横に並んでニコニコしながら磨いている。


顔を洗うとコーヒーを入れて、冷凍してあったパンをオーブンレンジで熱くする。

ピーナツバターを塗って希和に渡すと、嬉しそうに食べた。


「友希さんって、ケンカいっぱいしたの?」

「いや、全然」

「じゃあどうして不良を倒せたの?」

「俺の父親はヤンキーだったのさ、だから強いことが正義だった。

ひ弱な俺は小さい頃から散々格闘技を習わされた、強くないと大切な人を守れないからって言われてね」

「そう、じゃあ私を守るために頑張ったのね?」

「ん………」

「だって希和は友希さんの大切な人でしょう?」目を輝かせた。

「そうだなあ……大切な人(笑)ってとこかな」

「(仮)より酷いじゃん!」頬を膨らませる。


俺はコンタクトを入れる。

「えっ?友希さんコンタクトなの?」

「ああ、目が悪いのは母さん似だからな」

「そうなんだ……お母さんってどんな人?」

「学生の頃は瓶底メガネのガリ勉だったらしい」

「えっ……そんな人がヤンキーのお父さんと何で結婚したの?」

「父さんは工務店を始める時に、経理ができる頭の良い人を奥さんにしようと思ったらしい」

「ふーん」

「そしたら、同窓会でメガネをコンタクトにした母さんが可愛く見えたらしいぞ」

「へー……」

「母さんはこの人と結婚したら、楽しい人生になるかもって思ったらしい」

「そうなんだ。じゃあお父さんの強いところとお母さんの頭のいいところをもらったんだね」

「俺は父親みたいにデカくて強くない、それに母親の目が悪いとこをもらってしまったみたいだぞ」

「そうなの?そうは思えないけど、頭いいし強くてカッコいいと思うけど」

「そりゃあどうも……」

「希和も友希さんと結婚したら楽しい人生になると思うなあ」

「ええ……俺は希和を奥さんにしたら、面倒で大変な人生になりそうな気がするぞ」

「そんなあ………」ふて腐れた。


午後になり「オヤツを食べたい」と言われ天空カフェへ出かける事にした。

希和は迷わず俺のバイクに乗り背中に抱きつく。

「お前は自分のバイクで来いよ」

「やだ!」

「何でだよ」

「だって、またここに帰って来たいもん」

「今日は俺も所沢に帰るから何があっても泊まれないぞ」

「分かってる、でも少しでも一緒にいたいの!」

「…………」


天空カフェへ行くと新くんが手を振って迎えてくれた。

「新さん、私昨日から友希さんの所でお泊まりしたの」満面の笑みで発表した。

「おお!ついに(仮)が外れたか?」新くんはニッコリした。

「いや、(仮)が(笑)に落っこちた」

「なんだ……照れなくてもいいのに」

「そうだよ友希さん、照れなくてもいいんだぞ」希和は新くんの背後に隠れた。

「コラ!希和!調子に乗ってんじゃないぞ!」

背中に何か圧力を感じる。

「良かったわねえ希和ちゃん、もう希和って呼び捨てられる関係になったのね」振り向くと綾乃さんが微笑んでいる。

「怖!」思わず心の声が漏れてしまった。

「友希さんは心を盗んだ責任をとってれくれたのね」満面の笑みで圧力をかけてくる。

「雨や風で帰るのが危険だったから泊めましたけど、当然何もありませんよ」

「それは本人達にしかわからない事よね」

「う……新くん助けて……」

「無理で〜す!」新くんの目が泳いでいる。


希和は嬉しそうに綾乃さんになついている。

天空からの絶景は夜に向かって赤みを帯びて来た。

希和の頬はそのせいなのか、少し赤くなっているように見える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る