第12話 初めてのお泊まり

台風の影響もあってか、雨風が強くなって来る。

「この状況だとバイクで帰るのは危険かもしれないなあ……何でこんな時に来たんだよ」

「だって友希さんには土・日しか会えないもん」

「せっかく不良から解放して地元でも遊べるようにしたのに……」

「えっ!初めからそのつもりで児玉に行ったの?」

「ええ………まあ……」

「友希さん……ありがとう」そう言って抱きついてきた。

「こら!離れろ!」

「だって嬉しいんだもん」

「分かったから……」希和を椅子に座らせた。


「今日帰れそうにないからお泊まりする」嬉しそうに言った。

「ダメだ!……と言いたいところだが、この状況で帰すのは………」

「いいの?」

「うーん……じゃあ家に電話しろ」

「分かった」

スマホを出して電話している。

「あっお母さん?今秩父にいるんだけど、雨がひどくて帰れそうにないんだけど」

「えっ?そうだけど?うん」不思議そうにこっちを見た。

「お母さんが変わってって」

「えっ」驚いたがスマホを受け取る。

『もしもし、一瀬さんでしょうか?』

「はいそうです」

『美奈さんからあなたの事を聞きました、とても真面目で責任感の強い人だと伺ってます』

「はあ……そうですか……」

『希和が衣装を作る事でまた話ができるようになりました、それに高卒認定を受けると言って教科書を引っ張り出して勉強しています、やっと止まっていた希和の時間が動き出しました。とても感謝しています。ご迷惑をおかけしますが今夜泊めてやってください、お願いします』

「はい、解りました」

スマホを希和に返す。

「はい、分かった」電話を終わると、不思議そうに俺を見た。


「お母さんが、一瀬さんに迷惑をかけないようにって、何で名前を知ってるの?」

「美奈さんから聞いたらしいぞ」

「そっか……そう言うことか……」

「らしいな………」

「やったー!お泊まりだ、そうだお掃除のバイトをしーよお」そう言って壁に取り付けている掃除機を取り出して掃除を始めた。

掃除をしているとパンツがチラチラ見える。

「希和!その格好で掃除するとパンツがチラチラ見えてるぞ」

「今日は一番お気に入りの可愛いパンツだから少しなら見えてもいいよ」笑っている。

「うーん……あ、そうだ、確か2階に……」2階の物置にしていいる部屋からある物を探した。

「あった!これだ!」それを持って1階に降り希和に渡す。

「何これ?何で女性用のスウェットがあるの?」

「会社の後輩が泊まりに来た時用にって勝手に荷物の中に押し込んだんだよ」

「えっ……後輩って女の人ですか?」

「そうだけど」

「ここにお泊まりできる人なんですか?………」

「無理だね、ここの場所すら知らないし」

「好きな人なんですか?」

「ただの後輩だよ、ちょっとしつこいけどね」

「そうなんだ、彼女は私だけだよね」上目遣いで微笑む。

「ああ、(仮)だけどな」

「いいもん、他の人より一歩リードしてるんだもん」

希和は幼い顔で笑った。

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