パッとしない男の決心?

 夏休みの終わりバイト帰りの天音と幸太郎。

 天音は改めて隣を歩く晴れてフリーとなった初恋の人を眺める。初恋だったのかを確認する意味を込めてみている。

 散髪に最近行ってないのかちょいと伸び気味の髪は、細い目にかかってきている。

 特に目立つ特徴のない顔、でもあっさりしていてしっくりくるようなこないようなパッとしない顔。


 ただこの顔の小さな表情の変化に付添人天音は振り回されてきたのだ。それが使命であったからだ。

 使命と願望との差は紙一重か、少しずつ難しく考え込む天音の脳内はやっぱり混乱する。


 そんな天音の方を向いた幸太郎は、自分の顔を見て悶々とする天音が不思議であった。

「天音、なに考えてる?」

「いや べつに」

「ユージ君どうするか、とか?」

「ああ まあ それは考えてる」

「うん……天音」

「はい」

 天音と呼んで何も言わない幸太郎 しかし、なんとも切ない顔をしているではないか。


 とても言葉になんて出せないが、幸太郎は天音のことばかり考えている。だが、片想いをどうやってアプローチするかなど知りもしない。

 ねっムリ姫くらいの事件があれば早そうだが。

 今はただバイト帰り隣を歩く幼馴染だ。


「どうしたの?こーちゃん」

「……天音はユージ君が好きなのか?」

「……分からない」

「そっかあ。ユージ君はいつまででも待つって言ってるからな」

「……こーちゃんは?」

「え?!」

 自分は待つのかと聞かれたと動揺する幸太郎。

「こーちゃんは、一体何がしたいの?」

「何が……って」

「そうゆうハッキリしないというか、なんかパッとしないとこ……キライ」


「…………」

 どえらい嫌われたもんだとガクリと肩を落とすが、どんどん前を歩く天音。最近の天音は付添人じゃないからか若干キツめであった。天音は自分のことに関しては少し恥ずかしがり屋なのかも知れない。


「天音は……俺にどうして欲しい?その、た」

「はあ?そんなこと自分で考えなよっ。私はもうこーちゃんの人生に関係ないんだからっ」


 さっぱり訳のわからない話である。もう関係ないと言われても前は関係あったのかと、首を傾げる幸太郎はあることを思い出した。


「あのさ、天音が書いたの?神社の絵馬」

「…………」

 管理人の置土産、みんなは2回目の天音の記憶はある。ぼっちゃりの記憶はどこまで鮮明にあるのだろうか。


「天ってさ、天使かと思ったら天音かなって。天音も天使みたいだし」

「私じゃないっ。多分それ、天使さんだよ」

 真顔で返す天音。

 幸太郎もそれ以上会話を弾ませる能力など無く、二人はそれぞれ帰宅した。


 夜ベッドに入ってなかなか眠れない天音。


「天使……」


 天音のスマホがなる。

『天使の天音っ寝たかな。おやすみっ』


 ユージのメッセージであった。

 幸太郎もこのくらい粋な事をできれば良いのに、自室のベッドでじっと天井を見上げている。


「ニセモノ?だよな……」

 ユージとは付き合っていないなら、もっと積極的に動いて良いと言う事に気づいたのか。


 バタンっ!

「俺!遠慮せずにいかせてもらう。悪いな、しょう」


 半分寝かけていた勝太郎がまさにボケっとして起き上がる

「はあ?なに……それ言う相手俺じゃないだろ……おやすみ 寝るっ」

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