異世界遠征〜私の戦争〜

@Gamaschen2652

プロローグ 日本からの旅立ち

「この国は多くの病根を抱えている!」


多くの人が行き交う街道上、そこに一人の若者が、演説を行っていた。

しかし、道行く人は耳を貸さず、目の前を通り過ぎるばかりであった。

「…今日もだめか。帰るか」

そう言って帰り支度を始めたが、ただ帰るのも癪なので、少しあたりをうろついてから帰る事に決め、少し遠回りではあるが、商店街の中を通る事にした。

「相変わらずのシャッター通りだな…」

「チリーン…」

「ん?」

ふと風鈴の音のする方に目をむけると、そこには古びた古本屋があった。

「こんな所に古本屋なんてあったっけ?まあいい、覗いてみるか」

中にはいると、所狭しに和洋を問わず、年代モノの古本がうず高く積まれていた。

「ヘェ~、すごいな………ん?」

ふと、一つの本に目がとまった。

まるで魔法使いが読む様な装飾が施された本なのだが、何故か題名がひらがなで「とぉああいねあんでれんべぇと」と書かれていた。

「…?何だコレ?」

中を見ても、同じふうにひらがなで書かれているのだが、意味がまったく分からない文字の羅列が続くばかりであった。

『昔の人間が書いた落書きか何かか?けど何か、聞き覚えが有るんだよな…』

読み進めていると、ある文字が目に止まった。

『てひぃのろぎー?テクノロジーの事か?もしかしてこれ、どこかの国の言葉をひらがなで書いた物じゃないか?』

そう思い読み進めていくと、これはドイツ語であることが分かった。だがその内容が、異世界の門の開き方や、そこから出てきた物の記録などが、何百ページにも渡って書かれていたのだ。

『何だコレ…悪ふざけか何かにしても、こんな手間のかかることを何百ページも。内容も、ファンタジー小説か何か?』

しかし、本をよく見ても、百年は経っているんじゃないかと思う程劣化しており、とても最近書かれたとは思えない状態だった。

昔の人間が、ドイツ語のファンタジー小説をひらがなで書いたのかとも思ったが、それなら普通、日本語に訳すはずだと思い、ならばドイツ語の発音練習の為の本かとも思ったが、ならば内容がもっとそれらしい、日常会話のような内容になるはずだと思い、考えても謎が深まるばかりであった。

「ちょっと気になるな……買ってみるか」

そう思い、会計をしようとカウンターを見たが誰もおらず途方にくれていると、ふいに背後に気配を感じ、後ろを振り返った。

「うおっ!?」

そこには、お辞儀をしているのかと思う程に腰を曲げた老婆の姿があった。

「えっと、店の人?これ買いたいんだけど、いくら?」

そう聞くと老婆は手で、1、0、0、0と表した。

「千円?じゃあ、はい千円」

受け取ると老婆は、奥に引っ込んでしまった。

「…帰ろ」



家に着くと早速本の解読にかかり、これは異世界に行くための方法が書かれた本だと言う事が解った。

「異世界…?」

胡散臭いとは思ったものの何か不思議な物を感じ取り、ものは試しと思い、書かれた儀式を行う準備に1週間をかけた。

そして…

『とりあえず、この本に書かれている図を書いて、魔力が満ちた年の満月の夜に呪文を唱えよってあるが、魔力が満ちた年っていつだ?満月ではあるが…』

と、ここまでは準備はしたものの、いざ行うとなって、不安がこみ上げてきたのである。

『どうする、やっぱりやめるか?映画のミストみたいにヤバいものが出たりしないだろうか?本を読む限りでは、生き物が出た記録は無いようだが…』

しばらく思い悩みはしたが、結局

「これは千載一遇のチャンスだ。普通はこんな事有り得ない。だったら、これに全部を賭けてやる」

念の為党服と靴を履き、自前の日本刀を持って、呪文を唱えた。



西暦2021.9.22

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