第10話 疑惑

「それじゃ、私の母。三上春子の詳細と私が医療ミスだと思っていることについて説明していくわ。」


「ああ、よろしく頼む。ユキ。」


 それから、長い長いユキの説明が始まった。


 それでも、ユキの説明はわかりやすかったし、僕が理解できるように、うまく伝えてくれた。それに何よりも、情熱がスゴイと思った。本気で色々調べたのだという気持ちがダイレクトに伝わってくる。しかし、それは・・・ユキが本気で医療過誤だと思っていることの裏返しでもある。




「どう?概要は把握できたかしら?」


「ああ、とてもわかりやすい説明だったと思う。おかげで、大まかに事態の流れは掴むことができたよ。・・・・一応、確認のために僕が僕なりに説明してもいいか?」


「ええ、良いわよ。アウトプットは大事ですものね。」




「まず、ユキの母親、春子さんは1年前の10月14日・・・脳梗塞で倒れ、あの椿原市民病院に運ばれた。幸いにも、症状は軽く命に別状はないはずだったが、それ以来検査入院を繰り返していた。無事に快復に向かっていた。ところが、ある日を堺に良くなるはずが、症状が悪化し続けた。そして、先月の9月14日に亡くなったと。」


(だいたいこんな感じの流れだ・・・)


「そうね、そんな大まかな流れはあってるわ。」


「細かい症状の状態はわからなかったけどな・・・」


 ホント、わかりやすく説明してもらったのにこのザマとは。


「無理もないわ。それに私だって完璧に理解しているわけじゃないから安心して、それに、重要なのはそこじゃない!」


 厳しい口調に変わる。・・・が僕も同意見だ。先程言ったある日の意味、それは・・・


「この日、4月5日に主治医が変わってからよ。母さんの容態が悪化の一途を辿ったのは。だから、きっと、この主治医がなんかしたに決まっているわ。」


 ユキにしては決めつける言いぶり。だが、資料を見た感じ確かにこの日を堺に悪化しているのは事実だ。だが、それよりも僕が気になっているのはこの変わった主治医のこと。


「なあ、この変わった主治医って・・・」


 この名前に見覚えがあった。一瞬の躊躇いの後ユキは口にした。


「そうね、脳神経外科担当────原真人先生」


 予感は────的中していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る