W Ⅰ-Ep2−Feather 1 ଓ 独白 〜Side 〝J〟 ➳ monologue〜

W Ⅰ-Ep2−Feather 1 ―The first part ―


     ଓ


「――あくまで、『友達として大切』って意味だよ」

 ……嘘、だった。

 本当はもっと、〝彼女〟のことをずっと大切におもっていた。――だからこそ、〝彼女〟を失いたくないという気持ちの方が強く、とっさに嘘をついてしまった。

 けれど、それも間違いだった。その言葉が余計に〝彼女〟を傷付け、泣かせてしまった。……後になって、〝彼〟――ジェイトはとても後悔して、自分を叱咤した。

 それ以来、〝彼女〟に避けられるようになった。〝彼女〟のそんな姿を見たり、会えない日があったりなどすると、胸が張り裂けそうになった。

 ……どうしようもなく、〝彼女〟に会いたい。そんな気持ちばかりが募るのに、臆病になってしまう。――また、〝彼女〟を傷付けてしまうのではないだろうか? そんな繰り返しで、〝彼女〟と話したいのに、口を閉ざしてしまっていた。


 そんなある日、〝彼女〟の方から「――また一緒に、いても良い?」と尋ねられた。その途中、〝彼女〟は「何でもないから――ジェイトは何も悪くないから!」と弁明をした。……むしろ、〝彼女〟の方が何も悪くないというのに。――全部悪いのは傷付けてしまった自分の方なのに。

 自分をかばうそんな〝彼女〟を、一緒にいることで傷付けてしまうのではないのだろうかと、ジェイトはまた臆病になった。けれど、ここで断ってしまったら、今度こそ、本当に〝彼女〟を失ってしまうような気がした。……会えない日が続けば、こんなにも胸が張り裂けそうになるのに。――〝彼女〟を失うのだけは耐えられない。

 その「瞬間とき」、〝彼〟は自分が、ずっと〝彼女〟のそばにいたいとおもっているのだと気付いた。――それほどまでに、〝彼〟の中で、〝彼女〟の存在は大きなものになっていたのだ。


 ――あぁ……僕は〝彼女〟のことがこんなにも好きなんだ。


 不意に、ジェイトは自分自身のそんな気持ちを悟った。けれど、まだその気持ちを伝えるべき時ではないと、すぐに〝彼〟は思った。……今はただ、〝彼女〟と一緒にいたい。そんな気持ちの方が強かった。

 それに、今はまだ、「この気持ち」を伝える勇気はなかった。……けれど、いつかは、〝彼女〟に「この気持ち」を伝えたいとおもう日が来るような気もしていた。――「その日」が来るまでは、ただ〝彼女〟の側にいて、「この気持ち」をゆっくりと育んでいきたい。ジェイトはそう感じて、素直にそんな思いを〝彼女〟に伝えた。

「――僕も、僕の方こそ、悪かった。 本当は君と話したいと思っていたのに、今日までずっとそのまま黙っててごめん。 ……だけど、君の気持ちを聞いて、僕も『同じ』なんだって思った。 ――いつか、君に伝えたいっておもうことがあるんだ。 だけど、今は聞かないでほしい。 『その日』が来るまで、僕も一緒に、居てほしいんだ」

 そして、最後にジェイトは〝彼女〟に笑ってみせた。すると、ほんの一瞬少し泣きそうな表情を見せたが、〝彼女〟も微笑んで応えてみせると、歩き始めた。ジェイトはそんな〝彼女〟の歩幅に合わせ、肩を並べて歩き出した。


 ――ふたり並んで歩く・・、ただ、それだけで、開いていた距離が縮まっていった。

 それまで以上に、ジェイトと〝彼女〟の関係はより親密なものになっていた。その裏には、とあるふたり・・・・・・のおかげでもあることを、ジェイトはきちんと知っていて、ふたり・・・には感謝してもしきれなかった。

 より親密な関係になっていくにつれ、〝彼女〟に対する「気持ち」が少しずつ強くなっていくのを、ジェイトは感じていた。それと同時に、〝彼女〟を守りたいという気持ちも芽生えた。……〝彼女〟の方がずっと自分より〝力〟があって、できることはほとんど何もないのに。それでも、ジェイトは〝彼女〟の「力」になりたい、側にいて支えになりたいと思わずにはいられなかったのだった。

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