W Ⅰ-Ep1−Feather 12 ―The last part ―
「――さて、エリンシェ殿の〝
ディオルトの話を聞いて、エリンシェは思わず萎縮した。……どうして、そんな品が自分の元へたどり着いたのだろう。とてもじゃないが、エリンシェは自分とそんな〝聖杖〟とが釣り合わないような気がしていた。
「――良いかね? その〝
自信なさげにしていたエリンシェに、ディオルトがそう話して励ました。そんな彼の言葉を聞いて、アリィーシュが顔を上げる。
〝やはり「
アリィーシュがそう話すのを聞いて、エリンシェは彼女をじっと見つめる。視線に気付いたアリィーシュが、優しく微笑むと、ディオルトと同じく、エリンシェを励ますかのように、大きくうなずいてみせた。
「――あぁ、あれはアルジェクトが、相応しい者が現れるまで悪用されないように施したものらしい。 私も最初見た時、驚いたよ。 ……エリンシェ殿、もし良ければ、アリィーシュに、神が使う術を教えてもらうと良い。 〝力〟のある貴方にも使えるものがあるかもしれない。 それと、〝
〝エリン、大神様は天界の中で唯一、「
ディオルトに補足するように、話したアリィーシュの言葉を聞いて、エリンシェはまた目を丸くした。……まさか、天界を統べる大神だけが使っている「
「ぜひ、よろしくお願いします!」
「――まぁ、力になれることはほとんどないかもしれないが。 先程も言ったように、〝杖〟にあなたの思いを伝えるだけなのだから。 私も『あれ』と上手く付き合うのには苦労したものだが……今では良い〝相棒〟だよ」
まるで、「もの」ではない別の「何か」を相手していたかのようなディオルトの物言いに、エリンシェは思わずくすりと笑いをこぼした。その一方で、できるだけ早く、ディオルトに近付けるようにしなければならないと、エリンシェは感じていた。
「――エリンシェ殿。 私はこれまでと同じように、グレイム殿と協力して、できるだけこの地を守っていこうと思う。 学舎の結界も少し強めるつもりだ。 こちらもできるだけ
エリンシェは「分かりました」とうなずいてみせた。隣では、何かを決心したかのように、ジェイト、ミリア、カルドが顔を見合わせ、うなずき合っていたのだった。
「――ではまた」
それだけ言い残すと、ディオルトがグレイムから〝気〟を消した。少しの間グレイムは目を閉じ、すぐに開くと、元の調子で微笑みながら、エリンシェに声を掛けた。
「そういう訳だから、ルイングさん、いつでも私のところを訪ねると良いよ」
――グレイムのその言葉を最後に、大賢者と賢者や生徒、人や神の混ざった、少し奇妙な組み合わせの話し合いは終了した。そして、それぞれ、帰路についたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます