6−2


「知我、接客苦手っつってたけど、全然スムーズじゃあねえの」

 狩衣を来た仁礼丹が、隙を見て事務所の方から顔を出してきた。騙されたような気分で、優は神社のバイトに来ていた。参拝客は年納めの挨拶を交わす人が多く、やはり今日は大晦日なのだ。

 優は不思議なほどに、初めてやるはずの男巫のバイトに慣れていた。それは全て——。

「今日って、大晦日、なんですよね……」

「お、なんだ、知我。センチメンタルかあ?」

「いや、夢を見たんです。神社の手伝いをして、それから……宇宙人の……」

「宇宙人? ハハ、案外ファンタジーな夢を見るじゃあねーか」

 仁礼丹は優の肩を軽く小突く。

「訳が分からなかったです」

「だろうなあ。夢なんてそんなもんだ」

「……ですよね」

「どうした?」

「いや……なんでも」

 優は、無意識にお守りの在庫が入ったダンボールを持ち上げる。

「誰か、お守りの在庫見てくれませんかー?」

 同じアルバイトをする巫女が、そう困ったように声を発する。言い終わる前に、優はすぐ、その隣に、段ボールを置いた。アルバイトの巫女は、驚いたように目を瞬かせ、「あ、ありがとうございます」と微笑んだ。

 優は自分で不可解に思いながらも、頷く。

 そう言われる気がしていたのだ。

「巫女さーん、動画撮ってくださーい!」

 若者の集団が、巫女にスマートフォンを差し出す。承諾して受け取る様子と、優はぼんやりと見ている。

「五からカウントダウンするんで!」

 若い男がテンション高めに手を振った。見覚えがある。そうだ、動画で見た。テレビで見た。

 なんだっけ。あれだ、そうだ。

「『どうなってんだミステリー……』」

 優は呟いた。録画をしていない。ヴァンパイアが見たいと言っていたのだ。でも明日になったら、まだやっているから別に——なんでだっけ。

 なんだっけ。

 ——そうだ、カウントダウンだ。

 カウントダウンを聴きながら、俺は、お守りの在庫を見ていて、それで、それから——

「ごー、よーん、さーん、にー、いーち……! ぜ」

 一瞬——


 目が覚めた。

 まだ暗い。暗闇を見ている。不意に光が天井に走る。車が通っていったのだろうか。自分は——寝そべっている。

 動悸が、ひどい。視界が揺れる。優は、起き上がれなかった。

 なぜ。

 なぜ?

 どうして!

 神社にいたはずだった。

 また、夢なのか、、、、

 どうして、自分は、部屋にいるんだ?

 優は、枕元のスマートフォンに手を伸ばした。側面に触れた、手汗がひどい。

 電源ボタンを押す。時刻。


 2021年12月31日——午前〇時一、二、三——秒。

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