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2021年12月30日。
季節は冬。田舎以上都会未満の地方であるこの地域は、大雪とはいかないが、雪はカーテン越しにちらついている。まだ昼であるにも関わらず、窓からの冷気が寒い。
優はその様子を横目にしつつ、同じようにぼんやりと垂れ流しのテレビ画面を見る。普段ならこの時期は実家にいて同じように過ごしているが、今年はヴァンパイアが家にいるため、帰省をしなかった。
実家にこいつらを連れて帰るのもなんだか難しい。というか、説明が面倒だ。実家というものは、何かと子供のことに首を突っ込んでくる。ヴァンパイアがどうだこうだ、と言われたりするのは、少しいい気がしない。
構われているうちが華、とはいうだろうが、それでも構われたくないこともある。
年の瀬の長時間特番が流れる合間、ジャーンと注目を引く音と共に、CMが挟まれる。
「……今年もやってきました『世界どうなってんだミステリー』四時間スペシャル! 世界の衝撃映像、UMAやUFOの最新映像をお届け! UFO研究家の
若く見える年齢と不釣り合いなロマンスグレーの長髪で、サングラスに真っ黒なセットアップを来た男の姿が映る。下に遊泳歪とテロップがあるので、彼がそのゲストなのだろう。オカルトやUFOの特番でしか見ない怪しげな人間を、果たして「豪華ゲスト」と呼ぶだろうか?
「名物だよな……こういう時期」
優がぼそりと呟くと、ヨヴが本から目を上げてテレビに目を移した。
「そうなんですか?」
「なんか、長期休みのある時期だとこういう特番が多いんだよ。夏は心霊ものが多くなるけど、一緒にUFO特集も多い」
「へえー。みんな不思議なものが好きなんだなー」
マシカはあくびをして頬杖をつく。
「不思議の塊みたいな奴が何を……」
優が呆れているのを無視し、マシカは続く新年に向けたCMに目を向ける。
「それにしても、人間って節目の習慣が多いよね。大晦日とか、正月とか」
「一年の区切りがあるっていうのも不思議ですよね」
ヨヴがうなずく。優は眠気で働かない頭で少し考えた。
「ああまあ……言われてみれば節目は多いな。初詣とかは流石に、俺も行っていたし」
「初詣って何の行事なの?」
「神様に新年の挨拶をする……みたいな……」
言われてみれば知らない。優はニュアンスで答え、追求される前に話題を変える事にした。
「……初詣行きたいか?」
今年は、正直行くか迷っていた。特に信心深いわけではないが、毎年親と出向くのが習慣になっていた。両親に付き添う形だった。実家に帰らない今、積極的に行こうという感じはしない。だが、今までの節目の習慣が変わるのも、気持ちの悪いものだった。
友人の杭手や、先輩である拝見たちは予定があるだろうか、と考えたが、二人とも家の手伝いで忙しいかもしれない。
一人で行く気はしないが、二人に付き添う保護者という形なら、行ってやらんでもない。そういうことを優は思っていた。
「ええー……うーん、興味はありますけど、テレビの映像とか見ると、だいぶ人混みがすごいじゃないですか」
とヨヴは首をすくめた。
マシカは寝転がって伸びをした。
「僕らにとってみたら、一年とか一瞬みたいなもんだしなあ。あんまり節目っていう感じしないんだよね」
にゃはは〜と笑う人外どもに何も言えず、優は開いた口から言葉の代わりに、ため息を小さく吐き出した。
「それに、僕ら明日はちょっと用事があるんだよ」
「用事?」
「フラン博士の研究の手伝いをするんです」
「研究って、何の……」
優がそう言いかけた時、こたつの上に置いていたスマートフォンが震えた。
画面を見ると、カシラ——ああ、拝見先輩のせいで呼び名が移る!——もとい、サークルのOBである
「おめーら、年の瀬に何だけど、明日バイトする気ねえか?」
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