君への道しるべ ~ボカロソフトの入ったノートパソコンが冤罪から少年を救っていく~

蒼衣みこ

第1話 冤罪そして僕は引きこもる

 それは冤罪だった。

 

 僕、早霧さぎりそうは本屋で本を探していただけで万引きなどしていなかった。

 なのに、居合わせた同じ中学の同級生が「僕が万引きをした」と店員に言って捕まったのだ。


 荷物を調べられたら、鞄の中から漫画の単行本が出てきた。

 でも、僕は誓って万引きなんてしていなかった。

 漫画の単行本コーナーは通っただけで本当に万引きなどしていなかったから、否定していたら母が呼ばれた。


 母さんは 僕がやっていないというのに信じてくれなかった。

 僕の言葉も聞かず、ただひたすら謝った。

 母が盗んだと言われた本を買い取り、13歳で初犯である事から僕は帰宅を許された。

 

 仕事から帰宅した父に母は店員から聞いたことをそのまま告げた。

 父も僕の言い分は聞いてくれず、ただ僕をしかっただけだった。

 

「父さんも信じてくれないんだ…」

「おい!総!」


 父の声を背に僕はる方ない思いを抱いて自室に駆け込んだ。


 翌朝、朝食も食べず信じてくれない両親から逃げるように登校すると、僕が万引きしたと学校中の噂になっていた。

 座席についても誰も寄ってこない。

 市立小から試験を受けて私立中に進学し、新しくできた友達も無言で僕から距離を置いている。

 僕の側に来て事情をいてくることもない。


『人の信頼関係なんて…こんなにもろいものだったのか…友達と思っていたのは僕のほうだけだったのか……』


 僕は立ち上がり、1限目が始まる前に学校を飛び出した。



 通勤通学の多い時間帯を終え人通りの少なくなった住宅街。

 分譲住宅地の2階建て建売に越してきたのは僕が小学校に入学する年だった。

 入居した多くの家が草木を植え、緑あふれる住宅地となったが、今の僕にはそんな風景も見えていなかった。


 家には専業主婦の母がいるが、玄関の鍵はいつもかけていた。

 インターホンを鳴らすと母が出てくる。


「あら?忘れ物?っ総!」


 母の言葉もなかばに靴を脱ぎ棄て2階の自室に駆け上がり、部屋の鍵をかけた。


「総!どうしたの!総!」


 外からドアをたたかれてたが、僕は棚を動かしてバリケードを作り、布団の中に潜り込んだ。


 僕はその日引きこもることを選んだ。

 

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