飛ぶことに憧れた彼女、羽は折れてしまった
普通に暮らしている人が羨ましくてしょうがなかった。
人の悩み事を聞いているとそんなことで悩んでいるの?なんて思うこともあった。
私が見ていたはずの世界はどこかへ消えてしまい、今見ている世界はこの部屋から
見える景色のみ。
戻ることのできなくなった私はもう逃げることすら許されてなかった。
前みたいに授業を受けたかった、部活とかして青春をしてみたかった。
放課後に皆と遊んだり一緒に帰ったりしたかった、恋人を作って恋愛をしたかった。
このまま時が過ぎて苦しんで死ぬくらいなら自分で死のうと思った
動けなくなる前に、苦しむ前に、悲しむ顔を見る前に。
ふらふらとした足取りで私は屋上へと向かった、鍵は内側から開けることが可能で
すんなりと入ることができた、そこから見える景色は3年前とは変わっておらず
昔もこうやって夜中に屋上に来ておんなじこと考えてたっけっと過去を思い出しながら
いろいろな事を思い出した、死ぬ前に全部振り返ろうと思った
普通だったななんて思って少し笑ってしまったり
普通が良かったなんて思って泣けてきちゃったり
少し歩いて夜景を見ることにした。
対して何かがあるわけでもないし、すごいってわけでもない
誰でも毎日見ようと思えば見えるような夜の街だった
でも今だけはそれが綺麗に見えて、美しく見えて
こんな夜に死ねるなら本望かもななんて思って
私は一歩前に歩いた、神様を恨みながら
私は一歩前に歩いた、自分の事を憎みながら
あと1、2歩で落ちてしまうところまで歩いた
もう死ぬのか、まさかあんなに生きたいと思っていた私が自ら死にたくなるなんてな
そんなもんか人間、実際わからないことばっかりだ
神様なんて信じてないんだけどさ、今だけは恨ませてよあんたのこと
あんたのことしか恨めないんだからさ
はあ、もういっか
目が覚めた、またかと思い私は深い深呼吸をした
昔にも同じような夢を見た、前もこの夢を見た時改めて神様を憎んだ
夢の中での私は死に対する恐怖がなかったのか
それとも薄々夢だって気づいたのかわからないがすんなりと自殺できた
同じようにしたことがあったがダメだった、最後の一歩がでない
死ぬ勇気がない私は何かを恨み、何かを羨ましむ
たとえそれが現実にいないものであっても
人間なんてみんなそうだろう、自分を傷つけないために何かを妬み、欲しがり、侮辱する
そう言うもんだろう、私だってそうだ
「そう君は考えた訳だ」
聞き覚えのない声が聞こえた、その声はやけに透き通っていて綺麗だった
声の方向を向くと高校生くらいの綺麗な顔立ちをした人がいた。
彼は私の方に近づきこう問いてきた
「君はどうして死にたいんだい?」
「どうして死にたいかって?簡単なことだよ、怖いからさ死ぬのが」
「なのに死ぬのかい、かなり矛盾しているよ」
「わかっているよ、そんなことでもそう言うものなんだよ人間は」
「まず私はあと4年で死ぬ、そう医者に言われた、こう言われた時は全く理解かできなかった、だって少し前まで普通の女子高校生をしていたんだよ?普通に部活もしていたし、恋愛だってしていたさ!放課後に遊びに行くことだって数回だけどあったんだよ!これが全て
消えたんだ!ここに来る人は皆作り笑いをする!無理をしていることくらいわかる!
それがどんなに辛いことか!やがてそれにも疲れてしまい誰も来なくなってしまった
家族だけだよ今来てれるのはさ」
「人間はいづれかは死ぬ生き物だ、今死ぬか老いぼれて死ぬかだ…こんなニュアンスの台詞をアニメで何度も聞いてきた、実際に余命宣告されるとね目の前が真っ暗になるんだ
4年という長いのか短いのかわからない期間、外に出れずに待つことしかできない!こんなの
生きていても疲れるだけなんだよ…」
「4年で死ぬと言われた君は4年を過ごして死ぬより今もう死にたいと言うことか」
「そう言うこと、結局死ねずにいるんだけどね、歩けなくなる前には自分の足で死んでやるってずっとそう考えてる」
「それはいつの予定だい?」
「分からない、けどもう疲れちゃった」
「ねぇ、私が質問していい?」
「構わないよ」
「私は誰を憎めばいい?」
「憎む必要があるのかい?」
「そんなこと聞かないでよ、私が一番気にしてるんだから、
でもね憎まないとやっぱり生きていけない、いじめで自殺する人はいじめっ子を恨んで死ぬ
仕事がつらくて辞める人は会社を恨んで死ぬ
じゃあさ
病気がつらくて死ぬ人は誰を恨めばいいの?
なんで死ぬしか道がないの?他に道があるなら教えてよ」
「人間はみな行き着く先は死ですよ」
「そんなことは分かってる!言われなくても分かってる!
だけど普通の人間は普通に学校生活を送り普通に就職して
結婚して子供産んで老いたときに誰かと暮らしてやがては死ぬ
こう言う過程があって死ぬものなんだよ!
理想を追い求めるだけつらくなる!できることがなくなった今
生きることか辛いだけだ!他の人の悩みが全て羨ましく見えるんだよ!
恋人が冷たい?受験に落ちて将来が不安?友達と喧嘩した?
それは全て未来があるから言えるんだ!
未来がないものに悩みなんて贅沢なことはできないんだよ!
ただ背負い続けるだけの日々なんだ!
負の感情を誰かに吐き出すことすらできない!
余命宣告をされるってそう言うことなんだよ!
私だって死にたくないよぉ!」
彼女はそう言って泣き出した
少ししたら彼女は泣き止み深呼吸をした
「君はこの夢から覚めたいかい?」
彼女は少し考えて
「覚めなきゃ…」
そう彼女は少し微笑みながら言った
私は目を覚ました。そこにはお母さんとお父さんがいた
2日間意識がなかったらしい。助かったのは奇跡的だと言った
そっか…
死ねなかったのか
飛ぶことに憧れた彼女、羽は折れてしまった
完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます