邯鄲の枕
@furen_loren
現実逃避は必ずや、意味をなす
何も出来ない自分を恨んだ。ただ目に見えないものが怖くて
ただ走った、今だけでもいいから逃げれたらそれでいいのだと
「#$%&」を忘れさせてくれ。逃げ出した僕をどうか神様許してください。
あの時恨んでしまった僕を許してください。ないものに縋ってばかりの僕をどうか、どうか、助けてください。
そんなことを考えながら走っていたら僕は知らない街にいた。
そこは僕が知っていた場所とは程遠い場所であった。
川に畑に山に、そして邪魔するものが何一つない素晴らしい夕焼け
「なるほど」と呟いた僕はポツンと立っていた。
生まれた街から出たことのなかった僕は今いる景色が全て新しく見えた
新しいものしか見ていなかった僕は昔に触れ新しいと感じた。
明日はどうなるかなんてどうでもよかったそう思えた。今はもう少しこの景色を見ていたい。僕は気がつくと眠りについていた。
目が覚めるとそこはいつもの景色だった。ああそうか。やっぱりか
夢であったと理解するのに時間など必要なかった。
もう一度見れたらな、なんて心の中で呟いた。
日常はそう簡単に変わりはしない。わかっていた。ただ願ってしまうのだ、人が神を信じるように、死後の世界があると言うように
彼は自分の友達であると言うように、願うのである、縋るのである。
「そう君は考えた訳だ」
そう声が聞こえた、聞き覚えのない声がした先をふと見ると彼はベランダの柵に腰をかけていた。肌は白く、がたいはそこまで良くない、歳は自分とさほど変わりはしないだろうそんな中性的な顔立ちをしている
そして彼はまた口を開いた
私は君が昨日見た夢を知っているとそういったそして続けてこう質問をしてきた
「君はあの夢の中で何から逃げていたんだい?」
僕は少し考えた後に謎のこいつの話に乗ってやることにした
「自分自身、自分から逃げ出したくなった」
「なるほど、それはそれは先程の夢の中の君がそうしたのかい?それとも今もそうしたいのかい?」
「きっと僕はあれを夢だと途中で理解していた、わかっていたから逃げ出しても良いと思った、無責任に全てをほっぽり出しても良い世界線があったら誰だってそうするはずさ」
「なぜ君は今夢でしたように走って走って逃げ出した先を見ないんだい?
この部屋の外は君が一番知っているだろう?なぜそこを突き抜け逃げ出さない?」
「安定した職に付き、恋人を見つけ、結婚をし、老後をゆっくり暮らす…僕はそうするしか道がない、今ここを突き出し逃げ出したら今までの苦労は全て水の泡だ!」
『逃げ出しても何もなかったらどうしよう』
『今この世の中でそんな非現実的なことできるわけがない』
「そう言って逃げいるんだろう?」
「それの何が悪い、それら全て現実だ、本当にあることだ。今の社会人いや今の小学校、中学校ではそれらが全てだと習う。幸せの形など問われはせず、一部の人間の『素敵な幸せ』に考えを囚われている。そんなの皆気がついているさ、でもな人がこう考えを言うときこの国では全てが流されるんだ、考えも理想像も信念なんてありはしない!
その映画が戦争映画であれば命をかけて戦うのは素晴らしい、素敵だと思う
その映画が闘病に関する映画であれは命は限られており大切だと思う
ある映画では守るべきもののためならなんでもするというヒーローがいる
ある映画では守るべきもののためならなんでもするという悪役がいる
そういう悪役は最後は守って死ぬのがオチだ、だが結局はなんでもしていいわけ
じゃないよねと教えられる!だがこれが主役がやったのならば
素晴らしい!そこまでしてヒロインを助けるとはと賞賛されるこれが今の日本だ!これが今の世界だ!
逃げる?
ふざけたことを言うな!
逃げるなんてことは出来やしない!
ましてや今の世の中逃げずに戦ったものが
称賛される!
途中で逃げ出してしまえば今までの苦労は消える!
なかったことになるんだ!何故かって?ヒーローは逃げないからだ!
逃げても帰ってくるからだ!僕は僕のヒーローになりたいんだ!
逃げれないんだ!
だから!
だから…
だから………」
「僕を…夢から…覚ましてください」
彼は泣いてそう僕に言った
「そう君は考えた訳だ」
僕は知らない街にいた。
川に畑に山に、そして邪魔するものが何一つない素晴らしい夕焼け
「なるほど」と呟いた僕はポツンと立っていた。
明日はどうなるかなんてどうでもよかったそう思えた
今はもう少しこの景色を見ていたい。僕は気がつくと眠りについていた。
目が覚めるといつもの景色だった。ああそうか。やっぱりか
ベランダに彼はもう居ない
現実逃避は必ずや、意味をなす
_________完___________
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