第68話
「はーはーはー」
視界がひらける。
意識が戻る。
世界が正常に動き始める。
壊れた玉座に座る僕の隣に転がっているのは一人の女性。
普通の女性ではない。
上半身は人間、下半身は蛇の化け物。
上半身も普通ではなく、右腕左腕三本ずつある。
顔は異常なほどに青白く、右目は潰れ、左目はの爬虫類独特の縦に細く閉じた瞳孔をしていた。
僕の視界は広く、広がった。
「くっ……」
「なぁ、アラハバキ」
僕は床に倒れる化け物、アラハバキに声をかける。
「君は僕であり、僕は君だ。君がアカシックレコードに干渉できるのなら、僕に干渉出来ても当然だろう?」
アカシックレコードは正確に正常に記録されなくてはならない。
文字が化けるなど、認められるはずもないのだ。
「舐めやがって小僧が!」
アラハバキはハサミを作り出し、僕に向かって来る。
以前は僕も出来た奇跡。しかし、今の僕に出来る奇跡ではない。
しかし、僕には呪力がある。
「呪怪心刀」
呪力で刀を作り、アラハバキのハサミを受け止める。
「はっ!」
宙に浮かぶ幾つものハサミ。
それらが僕に向かって一斉に牙を剥く。
「無駄だよ」
僕はそれらを一瞬で呪怪心刀で切り裂き、アラハバキに刃を剥ける。
「くっ……」
アラハバキは蛇の体を上手く動かし、逃げようとするがそれを許す僕ではない。
アラハバキの下半身を大きく切り裂く。
「キキキッ」
「無駄だよ。君はすでに『全知全能』ではない。アカシックレコードを知ることも、干渉することも出来ない。呪力もほとんど残っていないだろう」
アラハバキはすでに神としての力をほとんど喪失していて、呪力を豊富に保有している僕の一族の人間に寄生しないと最早戦えないようなレベルなのだ。
「ダマレ!コノママデオワレルカッ!」
アラハバキの姿がどんどん膨張していき、一匹の大蛇となる。
「デカい的になっただけだ」
僕はアラハバキの身体を駆け上がり、刀を振るう。
呪怪心刀は容易く大蛇となったアラハバキの身体を切り裂き、黒い血が辺りを染め上げる。
「キシャァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
大蛇は悲鳴を上げ、何も出来ずに倒れる。
あとに残るのは一人の女性。
三対の腕も、蛇の下半身は失い、残るのは消えそうな一人の女性。
力が溢れ、格は堕ち、光となろうとする。
「神様。僕達一族の神様。僕達一族の希望の神様」
僕はすでに死にたいとなったアラハバキの手を掴む。
「ナ、ナニヲ?」
「僕の中で眠っていてください。僕とあなたはすでに一心同体なのです」
僕はアラハバキを自身の身体に取り込む。
「ア、アァ」
光はすべて僕に吸収される。
今日、一柱の神がまた崩れた。
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