第33話

「みんなでどこかに出かけようぜ!」

 突然、突然春来が叫ぶ。

 手に持っていたシャーペンも投げ捨てた。

 ものは丁寧に扱えよ。

 僕と美玲は携帯から目を離して、春来のことを見る。

 いきなりどうしたこいつ。

 勉強のし過ぎ頭狂ったか?

「そんな悲しいやつを見るような目で見る必要は無いだろ!?別に割と普通の提案だろ!?」

 春来が全力で叫ぶ。

「ただ、みんなでどこかに出かけたな!って思っただけだよ!?友達と遊びに行きたいと思うことくらい普通だろう!?」

 必死に、無様に、春来は弁明する。

「あなたが私の友達なんて笑わせてくれるけど、羽虫にしてはまともな意見ね」

 美玲が冷たく、痛い言葉で春来の提案に賛成の意を示す。

「そんな言う……?」

 春来は心に傷を負ってしまった!

「まぁ、たしかに良いんじゃない?

 美玲の社交性が上がってくれるかもしれない。

 誰かと出かけるというのは良い経験になるはずだ。

「お前まで!?」

 春来の瞳に涙が浮かぶ。

「みんなが賛成なら、私も賛成よ。その前に春来には勉強をしてほしいんだけど。まぁちょうどキリは良いし、先に決めてしまおうかしら」

「遊園地なんてどうだ?前に瑠夏と一緒に行った時楽しかったんだよな」

「うん。楽しかったね」

「なら決まりね。遊園地に決定よ」

 美玲が勝手に決定する。

 貸切。貸切しておかないと。

「あ、瑠夏。貸切にはしないでちょうだいね」

「……うん」

 まぁ、学生として遊びに行くならそうか。

 ……そうか。

 美玲に気づかれないように護衛つけるの(/)・ω・(ヾ)つらいむ

「日時はそうね……。決めたのならすぐに行動すべきよね。今週の土曜日にしようかしら」

「あ、ちょっとまって。今週の土曜日俺予定ある」

「だまりなさい」

 美玲の決定に口を挟んだ春来を一喝する。

「反対はいないわね?じゃあ決まりよ」

「……え?」

 春来が悲しげな声を上げる。

 しかし、もう決定事項だ。

 よほどの予定でない限り決定を跳ね除けられないだろう。

「……まぁいいさ。延期にもできるしな」

 次の土曜日、みんなで遊園地に行くことが決まった。

 それにしても、美玲が誰か、僕や家族以外とどこかに出かけるなんて初めてだ。

 このまま美玲には順調に社交性を学んでもらいたい。

 最終的に僕なしでも自分から誘って、どこかに遊びに行ってくれるようになって欲しい。

 そこまで行けたらもう十分だ。

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