第28話

 授業中。

 僕は春来と一緒に人気のない屋上につながる階段でゲームしていた。

「はぁー」

 僕は重い息を吐く。

「お前もなかなかに大変だな」

 まるで春来が他人事を話すがごとく適当な言葉を投げかけた。

 いや、実際に他人事なんだけど。

 他人事なんだけど!

「えい」

「いった!」

 僕は普通にムカつくので春来の頭を思いっきり叩いてあげる。

「いや、ちょ、何するんだよ!」

「他人事でムカつくから」

「いや、実際に他人事じゃん」

「でもムカつくじゃん」

「うっざ。でも実際のところ俺にはどうしようもないじゃん」

「まぁ、そうだけどね」

 僕だって解決できそうにないのだ。

 春来が解決できるとは到底思えない。

 全く。

 なんで僕はあのとき和葉に対して慈悲を見せたのだろうか。

 和葉とのデート。

 それ以来、和葉の僕に対するアプローチは段々と強くなってきていた。

 それにお嬢様が機嫌を損ね、地獄を生み出す。

 二人が一緒にいる場所に僕がいると色々と危険なので、僕は自主的にクラスから離れているのだ。

 先生もそれを黙認している。

 僕が授業を休んでくれたほうが、先生方もありがたいのだ。

 あんな地獄と化した場所で授業なんて行えないのだ。

 それにどうせ、僕はそこそこ成績がいいのだ。

 ある程度は自由にさせてもらえる。

「なぁ、実際のところはどう思っているんだ?」

「ん?何を?」

「二人の気持ちだよ。あれだけラブコールされていれば好かれているってこともはっきりと分かるだろ?」

「二人?」

「ん?そうだよ。西園寺さんと四宮さんの恋心にさ」

「和葉はわかるけど、お嬢様はないよ?」

「は?まだ言ってんの?いい加減わかっているだろ!」

「……?僕はお嬢様の道具だよ?そんなことあるわけないでしょ?」

「……もういいわ。仮定でいいよ。仮定の話。西園寺さんと四宮さんから好かれているとしたら、それについてどう思う?」

 全くそんなありえない仮定に何の意味があるんだ。

「お嬢様に好かれているとしたら僕は自殺するよ」

「は?」

 僕の答えが理解できないと言わんばかりの表情を浮かべる。

「な、何言ってんだ?」

「ん?それはそうだろう。所持者から異性としての好意を持たれる道具など道具として失格だろう」

「だ、だから、死ぬ、と?」

 ん?当たり前だろう。

 なんでそんなに動揺するんだ?

「変なの。それで和葉への対応か。別に付き合ったりなんかはしないかなー。人から好かれて嫌な気持ちはしないけど、それでも僕はお嬢様の道具であるし、それに僕は……」

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