おおいなる尻の受難
イゼオ
第1話 おおいなる尻の受難 ~入院前夜~
2020年8月26日。人生初の入院をすることになりました。
原因はお尻です。詳しく言うと
痔瘻!
どういうものかよくわからない方に、求められなくても説明します。
痔瘻とは痔の一種で、簡潔に書くと尻に穴が増えて膿やら血が出てくる病気です。怖いですね。かかっている本人はもっと怖いです。尻に穴は一つで十分なのです。
さて、どうしてこうなったかというと、さかのぼること2020年5月の中ほど。なんだか肛門の近くに痛みを感じ、恐る恐る手を伸ばしてみると奇妙なふくらみができていました。
おできかなにかでしょ。放っておけば治るよね。とあの時の私は根拠のない楽観性を遺憾なく発揮してこれを放置。
ここですぐさま病院に駆け込んだとしても、結果がそう大きく変わったとは思えません。でも、少しはマシになっていたのかもしれない。少なくとも、三か月尻ガーゼに悩まされることにはならなかったのではないでしょうか。
――そう、尻ガーゼ。
6月初旬、尻の調子は一向によくならず、むしろひどくなる一方だったので私は肛門科を受診しました。
私は元々痔主なので、お医者さんに肛門を見られても痛くもかゆくもありません。なんなら指だって突っ込まれました。恥ずかしかったのは最初だけです。もう何も怖くない。
そして診察。
常に穏やかな笑みを浮かべるドクターの見立ては
診察台に寝かされ、尻丸出しで私は思いました。これは果たして現実なのだろうか。
尻にメス(見えないけどたぶんそう)を入れられる恐怖は今思い出しても震えが来ます。もう何も怖くないっていうのはあれ、嘘でした。
ろくすっぽ覚悟もできないまま痛み止めを注射し、
って痛ってぇぇぇぇぇ!
サクッと切られた感触と共に尻に鋭い痛みが走りました。痛み止めしてこれとか! 思わずうぐっと声が漏れました。人生で5本の指に入る痛みでした。飲食店で働いていた時にスライサーで指をざっくりやった時の3倍くらい痛かった。
けど、切開の痛みなどほんの序の口でした。
これが、この先の受難の幕開けだったのです。
切開後、切った部位に膿を出すための管を着けてガーゼで覆うことになりました。尻ガーゼ生活の始まりです。
切開翌日の朝、交換のために取り外したガーゼの色に束の間気が遠くなりました。何重にもした分厚いガーゼが真っ赤。これ貧血になるでしょレベル。あの時の私は泣き笑いみたいな顔を浮かべていたと思います。
でまあ一週間くらいで管は取れたのですが、血と膿が止まりません。先生は大丈夫大丈夫と笑うばかり。
日常生活はかなり悲惨なことになりました。尻が痛くてまともに座れません。座れないっていうのはそれだけですごいストレスです。知りませんでした。尻だけに!
Asshole.
立ったり座ったりと、傍から見たら新種のスクワットでもやってんのかっていう動作を繰り返して苦しんでいたのですが、アマゾンでドーナツ型クッションを買ってようやく一息つけました。穴あきクッションは偉大な発明。それでも痛いんですがだいぶマシです。ただ、長時間パソコンの前に座り続けるとか無理でした。
そんなこんなで一か月経過。
依然として痛みは消えず、腫れも引かず、血も止まらず。
で、ついにもう一度切開することに。嘘やんと思いましたがどっこいこれは現実です。
再び切られて尻ガーゼ継続。
教えてくれ肛門、俺はいつまで尻にガーゼを貼り続ければいい?
さらに一か月経ちました。血は止まりませんが先生曰く「中は治ってるね。後は外が治れば大丈夫だよ」
ウソやん……。まだ痛いんですけど。
さすがにおかしいと思い、別の病院に行きました。セカンドオピニオンです。
そしたら結果は「ああ、これは手術しないとだめですね」
やっぱりか……。
もちろん手術は怖いですが、安堵している自分もいたのです。いくらなんでも二ヶ月血が止まらないとかおかしいですよね。病院を変えた自分は間違っちゃいなかった。
とまあ、そういったわけで、9日間の入院生活に突入することになりました。手術は入院から二日後。
積ん読、タブレット、Vitaを持ち込むので時間つぶしの用意はばっちり。後は恐怖に打ち勝つのみ。
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