ハンスはどこへ行った?
第22話 パパ卿からの手紙
ルベライト夫妻のちょっとした事件を解決した後、名探偵ラト・クリスタルは長くて
冒険者たちはいつにも
何度かまた禁止薬物に手をつけようとしたし、どういうわけか楽器を買ってきて
それも、
たまりかねて
おかげでクリフの就職活動は、より一層困難なものとなった。
さらには
しかもその間の生活費は夫人が出すというおまけつきである。
ただ
クリフは夫人の言葉に甘えることにした。受ける依頼の数を
クリフは積極的にラトを街へと連れ出した。
ラトの
今や、ラトは自分の部屋に、パイプのついた金属製の
カーネリアン邸の
外は冷たい雨が降りしきっており、だからというわけではないだろうが、ラトは劇場を出た直後から思い
「劇はどうだった? 大衆演劇というのもなかなか悪くはないだろう?」
クリフが気遣って声をかけると、ラトは悩ましげな顔を上げた。
「君にこんなことを
「それは――」
「いや、僕に言わせてくれ。犯人はシモーヌ。……と見せかけて、クリストを
クリフは黙りこんだ。
残念ながらアンドレアが死から復活した理由は、来週公開予定の続編でもとくに語られることはない。しかも原作小説によるとアンドレアは作品の人気を
そういう、高貴な夫人の
犯人はいないし、推理などする
「来週は
クリフがそう言ったのは、もちろん、ラトの気を
「どうして? 劇場に行って、推理の答え合わせをするんじゃないの?」
このままラトを劇場に連れて行ったら、推理の答え合わせどころか、地獄の
いったい、この
深く激しい頭痛を
彼はカーネリアン夫人に仕える
モーリスは手早くラトとクリフの雨よけ用の
「
もう三日は眠れていないだろう神経質な執事の
「残念ながら、
「お力になれるかわかりませんが、お手紙が届いております」
「俺に?」
「いいえ、ラト様へのお手紙です」
執事は手紙を
幸運の手紙であってくれ、とクリフは願った。
その願いは確かに女神に聞き届けられたようだ。金色の
「わあ、見てご
ラトはうれしそうに飛び
「…………パパ卿? なんなんだそりゃ」
「僕のパパであり貴族の爵位を持つ。だからパパ卿だ」
「お前の父親なのか? 本当に本当の意味で? 両親のうちの片方だってわけか?」
「この僕が木の
そのほうが安心できるとクリフは思った。
ラトも人の子なのだと思うと、それだけで悪い夢を見そうだ。
「確か、親父さんも
「そのとおり。僕のパパは
クリフは声をひそめ、執事に「聞いたことあるか?」と声をかける。
カーネリアン邸に長く
けれどもパパ卿の手紙はラトの退屈に
正直いって、父親からの手紙なんてクリフにとっては
クリフと執事は久しぶりに
地獄のリサイタルの開演日は遠のいたようだ。
ありがとう、パパ卿。
「ふむふむ……なるほどね……」
「参ったな、クリフくん。パパはどうやら自分の仕事が立て込んでいて、手が
「依頼人? 依頼人ってなんだ、何のことなんだ、いったい」
クリフは
「つまり、何らかの――……人には大っぴらに言えないような
そのとき玄関扉を激しく叩く音がした。
クリフは全力で関わりあいたくないと感じた。
「おや、
「いや、ない。俺には全く興味なんかない」
「どうして? パパ卿たっての頼み事なんだよ?」
さも「協力するのが当然」みたいな顔をしているのがクリフには理解不能だ。
しかしクリフの隣で事情を聞いていた執事は、クリフの肩を叩き、こう言った。
「パパ卿たっての頼みごとなのですよ、クリフ殿」
灰色がかった青い瞳には、うむを言わさぬ力強さがある。
その言葉の裏側には、別の言葉が
カーネリアン家の
つまりはそういうことだ。
なんてことをしてくれたんだ、パパ卿。
恥を知れ。
クリフは心の中で、まだ見ぬパパ卿をののしった。
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