第20話 悪意の証明
ラトが
信じられない
ラトはカーネリアン邸の
クリフはラトにも金魚にもなるべく近寄らずに過ごした。
夫人の
その日の午後、カーネリアン邸を訪れた宝石商たちは、あまりの
宝石商たちはウールのジャケットを着こんだ太った男と、
その
目を
「まあまあ、お待ちしておりました。ようこそ我が屋敷へ……」
実際に商談に当たるのはカーネリアン夫人だ。
ルベライト元夫人は
もちろん、カーネリアン夫人も、ルベライト元夫人も、宝石商から宝石を買い
これはラト・クリスタルのたくらみなのだ。それだけははっきりしている。
カーネリアン夫人の
「ラト、宝石商がやって来たぞ」
扉をノックすると、中から眠たげな声がした。
「ああ、ようやくか……。どうぞ、入りたまえクリフくん。連中、もう街を出ちゃったんじゃないかと心配してたところだよ」
ラトが毛布の下でごそごそしながら
服のまま寝たらしく、シャツは
ラトはクリフがソファの下から発見した
「なあ、ラト。聞いておきたいんだが、何故宝石商をカーネリアン邸に呼び出したんだ? 事件の謎はもう解けたということか?」
クリフが
「ひとつはっきりさせておこうか。この事件に犯人がいるとしたら、それはルベライト夫人だよ。宝石を消してしまったのは彼女だ」
「なんだって?」
「なんと言われようと、彼女が犯人だ。だって、彼女以外に宝石と二人きりになった人物はいないんだからね」
クリフはカーネリアン夫人がいまのセリフを聞いていなくてよかったと思った。
彼女はルベライト夫人にかなりの信頼を
「それはとんでもない
「そんなことは僕の知ったこっちゃないね……。しかしかばうわけじゃないが、ルベライト元夫人は宝石が消えてしまうとは思ってなかったはずだ」
「つまり、どういうことだ」
「交通事故みたいなものだよ。どんな馬車だって、
「お前さんが何を言おうとしてるのか俺には
「そうとも。だが、悪意が全く無かったというのは言い
「ルベライト夫人は無意識のうちに魔法を使って宝石を消してしまったとでも言いたいのか? ばかげた
「そこがこの事件の難しいところだよ、クリフくん。今回の場合、正直いってルベライト元夫人よりもたちが悪い人物たちがいるんだ。それがあの宝石商たちだよ。僕が考えるに、彼らは
「会ったこともないくせに、何故そんなことがわかる?
「すぐにわかるよ」
ラトはたっぷり時間をかけて
客間では商談の真っ最中であり、
主にジャケットの男がこの宝石がいかに
「
カーネリアン夫人は開いた
「なんといってもお
あまりにも適当なことを言っているので、クリフはあきれ
この二人が
それでなくともこの二人はどうも目つきがぎらぎらとしていて、言葉にはしないが《この宝石を街一番の
ラトはこの嫌な空気で満ちた交渉の場に土足で入って行って、にっこりとほほ笑んでみせた。
「ごきげんよう、僕はラト・クリスタル。この屋敷の
ただ笑顔だけを取り上げるなら、たおやかで美しい少年か少女のそれなのだが、ラトの
宝石は青いひとかたまりで、まだ
商人が何か言う前に、ラトはポケットから取り出したルーペで宝石をぶしつけに
それから、突然、大きな声を上げた。
「いやはや――なんてことだ、これはひどい。カーネリアン夫人、この石をはっきりと見ましたか? ひどい色ですよ。質も悪い!」
宝石商たちは何とも言えない
さりげなくラトから宝石を取り返そうとするのだが、伸ばした手は
「あなたたちはとんでもない詐欺師です。こんなまがいものの石を宝石だなんて、よく言えるものだ!」
「いったい、なんの根拠があると言うんですか。これは、北部の鉱山で新らしく発見された、まだ誰も知らない
「ちがうね。これはクズ石だ。ほら、ここに証拠がある。表面が
ラトはまさしく
そのとき、商人たちは
「やめろ!」
「待ってくれ、待つんだ!」
さっきとは全く違う
しかし願いもむなしく、宝石は水槽の中へと消えて――そして、本当に消えてしまった。
水槽のどこにも、宝石が落ちた
「消えた!?」
クリフは声を上げた。
水槽の中の水は
「ビックリした? これはただの
ラトは水槽に手を突っ込んだ。しかし、ラトの
びっくりするクリフたちの表情を見て、ラトは
「鏡を二枚貼り合わせるだけで宝石が消えるなんて不思議だね。だけど、そっちの二人はどうしてそんなに驚いているのかな……?」
宝石商たちは明らかに平静を
「君たちは僕が宝石を水槽に落とす前に驚いて席を立った。なぜでしょう?
「ちがう、私たちは……ただ……」
宝石商の、太ったほうが気まずそうに言った。
「それならいいけど。言っておくけど、僕は
ラトはそう言って、宝石を水面に近づけた。
宝石商たちは取るものも取りあえず、その場を逃げようとして、太った男はクリフに、そして
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