第6話 知ってるのに知らないふり
その場所は
カーネリアン夫人の
仕掛けには
記憶鉱石はその名の通り、物の
隠し部屋の入口に設置されていたものは夫人の
カーネリアンの血筋の者しか開けられない仕組みだ。
階段を降りるにつれ周囲の空間はカーネリアン邸のほかの場所とちがう、
これほど
「本当に女神レガリアというものが、この世界に存在しているのですね」
そう
「王家や貴族の方々こそ、強力なレガリアをいくつも所有しているではありませんか」
「……え? ああ、まあ、そうですが」
元近衛兵隊長は
クリフのような元
だが、カーネリアン夫人はクリフの
「ですが
「それほどまでとは……。おい、ラト、何をしているんだ」
クリフは
ラトは二人からかなり離れたところでしゃがみこみ、地面をじっと見つめている。何をしているのかわからないが、これまでもラトのすることの先に何が
「おい、いったいどうするんだ、これから」
「決まってる、
「お前、ときどき会話が通じなくなるな……。本当にガルシアが
「まあ、間違いなく来るだろうね。彼は女神レガリアのためにもう二人も殺した。そうなると
「レガリアをいくつも持ってる奴をどうにかできるほどじゃない。目的のものを
ラトは
「それよりもいい手がある。君が女神レガリアを使ってガルシアを
「俺が? その、わけのわからないレガリアを?」
「レガリアは単なる
確かにラトの言い分には
ガルシアが隠し部屋のことを知っていたとしても、隠し扉を通れるのはカーネリアンの血筋の者だけだ。
エストレイが死んだ今、扉の
「心配し
ラトは冗談めかして言い、クリフの肩を
今のところ、ラトの発言の中では、すこぶる安心感が持てる言葉だった。
二人は歩き続け、どれくらい
そこにも鍵のついた扉があり、内側にはカーネリアン邸の大広間にも負けていないほど
天井から光を
広間の中央に、
台の上にあるものが
「あれが……女神レガリア……?」
台の上には赤子の頭ほどはあろうかというくらい巨大な
「ふむ……これは……」
しかし、あれほど女神レガリアを求めていた
ラトは金剛石のかたまりを
それひとつで城が立つくらいの価値がある宝物をだ。
「これは女神レガリアではありませんね」
カーネリアン夫人は
「ええ。これは万一、
クリフは
金剛石を守るためだけに地下空間が作られたとしても何ら不思議ではないのに。
ラトとカーネリアン夫人には金剛石がはなつ
「では、
「いえ、本物の金剛石であり、それなりのレガリアです。ですが、そんなものは金で買える価値でしかないのです。いくらでも
そう言って身を
台の一面を
カーネリアン夫人はダイヤルを
数字の最後を入力し、鉄の扉を開けようとしたとき、ラトは夫人の手を止めさせた。
「お楽しみはしばらく待ってください」
「どうしたんだ、ラト」
声をかけたクリフに、ラトは人差し指を立ててみせた。
その視線は天井に向けられている。クリフも上を向く。
しばらく耳を
続いて、何者かが階段をゆっくりと
「誰かが降りてくる……!?」
「そんなまさか、あり得ません。ここに
長年、ひとりきりでこの空間を守ってきたカーネリアン夫人が
ラトは
そうしていると壁が
「ここに入れる人物はもう一人いるよ、クリフくん。エストレイだ。彼もカーネリアンの正統な後継者だ」
「エストレイは死んだんだぞ、まさか生き返ったとでもいうつもりか」
「迷宮の外では、死人は生き返ったりしない」
ラトの
三人の見ている前で扉が
しかし、そこには誰もいない。
ただただ
何もない場所に向けてラトは軽く片手を上げて
「やあ、ガルシア。ごきげんよう。姿が見えないのは《
三人が見ている前で、透明人間が秘密のヴェールを取り払った。
その
まちがいなく葬儀のときクリフを殴りつけた人物だ。
クリフは嫌な予感がしてラトに訊ねた。
「ラト、本当に
地下に降りるとき最後尾にいたのはラトだった。
「ああ、もちろん、キッチリ閉めたよ。紙きれ一枚
「だったら何故あの男がここにいる?」
「たぶん、
ガルシアは無言で手に持っていたものを
それは人間の手首だった。
それも血の
「あれが合鍵。説明不要」
そう言ってラトは首を
クリフはラトを
「それじゃ、
これまでのラトの人を食ったような言動や行動、そして
ラトは腕を組みながらそわそわと落ち着きなく体を
「そんな、まさか……このラト・クリスタルとあろうものが、そんなこと……」
「いいか、よく聞けよ。このままガルシアとやり合っても
「正直に言う。気づいてた。あたりまえじゃないか」
この
クリフはさらに
「冒険者ギルドを出たとき、お前は女神レガリアの話をしたよな。それもわざとだ」
「もちろん。わざとだ。どこかにガルシアが隠れていると思ったから、わざわざ君に
「何故そんなことをしたんだ!」
「どこにいるかもわからない
「得なんかじゃない。危険だ! それとも、これでもまだ何も問題ないのか?」
「ああ、問題ない。なにしろ、こちらには女神レガリアがあるんだからね」
そのとき、カーネリアン夫人の
「ない!」
ラトとクリフは
台のすぐそばでカーネリアン夫人が座り込んでいる。
台の隠し扉は開け放たれていた。
「女神レガリアが無くなっている……!?」
夫人の驚きも無理はなかった。
隠し金庫の底に
「言ってみろ。これでも何も問題はないのか?」
クリフはラトに
ラトはというと、ガルシアを見つめたまま、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます