ステータスウィンドウ職人 ~異世界転移して外れスキルを引いた件について~

サカイヌツク

王都の人々と魔王の戦場 編

第1話 オ〇ニー中に異世界に飛ばされたお

「私……タケルのことが好き……だった」


 僕は根っからの陰キャオタだ。

 ゲームが好き、漫画が好き、アニメが好き、リアルは苦手。


 そんな僕は最近SNS上で評価され始めたエロゲをプレイ中につき。

 今、1000KBまでシナリオを進めてよーやく、濡れ場に差し迫っていた。


 ティッシュにゴミ箱、エアコンによって快適な室内、親の目を盗むための夜間活動。

 そのための準備はもうすでに済ませてある。


「ああっ、タケルの……熱い」


 ヒロインは主人公の逸物をうけとめ、下腹部に手を添えてその熱を伝える。

 このエロゲはシナリオに力を注いだものであって、特に性癖に刺さることはない。

 しかし、1000KBに及ぶ長大な前書きに、期待してなかった訳でもない。


 ――っ、っ、っ。


 エロゲの内容に合わせるよう、右手を上下に動かし、僕は事に及び始めた。

 一人情事の最中に、脳裏で考えてしまうんだ。


 今朝も今朝で、親から将来について聞かれ、特に答えられなかったこと。

 僕の成人式も近づいて来たことだし、本腰入れて将来を考えないとならない。


 将来を考えると、気が憂鬱だ。


「すご、いぃ、タケルのが、私の中でたけり狂って、アアッ!」


 だからこその自家発電なんですけどね。


 今、将来を思案しようとも、明日が一変するんでもないだろうし。


 特に現代は就職氷河期と言われるほど、生き難い世の中で。

 GDPも低下しっ放しだ。

 この現実でワンチャンあるとしたら、貯金をどうにか運用するしかないと思える。


 けど――僕こと竹葉タケルのワンチャンは、オ〇ニーの最中、霧散する。


「ようこそ、御出で下さいました……」

「はぁ、はぁ、っ、はぁ、ん?」


 ここは一体、どこだ?

 中腰で及んでいた一人情事の途中、僕は先程までいた自室とは別世界にいた。


 そこは白い円柱状の建物で、僕は円の中央の少し窪んだ場所にいる。

 よくよく周りを窺うと、僕を囲むように幾人もの女性が祈るよう佇んでいた。


「……え?」

「え?」

「きゃあ! この方、手淫していますッ――」


 白いブーケを着けた手近な女性は僕の一人情事に気が付くと、悲鳴を上げ尻もちをついた。僕も慌ててズボンを上げたけど、勃〇した逸物に引っかかって上手く穿きなおせず、さらにぬかるんだ地面に足元をすくわれ、盛大に転倒してしまう。


 その光景に、僕を囲うようにして祈りを捧げていた女性たちは甲高い喧噪をあげ。

 周囲は一瞬の間を置いたあと、騒然となった。


 ここは一体どこなんだ?

 さっきまで杞憂していた、先の見えない僕の将来は?

 という疑問や、冥々とした不安よりも先ず思えたことがある。

 それは何かと言うと――


「……死にたいお」


 僕の人生、オワタ。


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