AZ388 勇者と大樹の実
*>>三人称視点
ギビンを乗せた戦闘機は浮島にたどり着く。時刻は深夜3:30ほどだ。
「ここが浮島…僕始めてきましたよ!」
「んあ?ああ、木星出身だっけか?ふぁ〜私はもう眠過ぎて…」
戦闘機を降りるなり興奮冷めやらないギビンとは違いミカは眠たそうに目を
「日本地区。よる」
「ここもド深夜だろ?」
「僕の住む地区はまだ夕方感覚ですね」
それぞれの時差が感じられる瞬間である。ちなみに余談であるが世界の基準時は今も変わっていない。
1年は365日であるし1日は24時間である。しかし、地球上以外の惑星や衛星ではそれが正しい1日になるかといえば少し違うのだ。
水星から火星までは24時間あるいはそれに準ずるタイミングで日夜の変化が訪れる。
しかし木星以降の場所ではなかなかそうもいかない事情があったりするのだ。
夜の日、昼の日といった分けられ方をすることもあれば、夜期と呼ばれる夜が続く季節を持つ衛星も存在する。
さらに夜しかない待機を基本的には保持しない衛星などもあるため、あくまで土地ごとに合わせた指標といった具合だ。
それにその衛星内でも地球と同じく時差があるため、相手がどの時間帯なのかというのはプレイヤーからしてみれば判断に難しい。
閑話休題。
ミカとギビンを迎えたのはギルドアインズの大男。灰色の髪を角刈りにした無口なプレイヤー。ダイチである。
ミカとダイチは闘技大会などで面識はあるが面と向かって交流するのは初めてである。
「大樹まで案内する。木星まで護衛も」
「んあ?護衛はありがたいが浮島は動けねーだろ?どうやって着いてくるんだ?」
アインズが所有する浮島は移動こそできるが月の中のみである。よって木星まではついて来れないはずだ。そのことを指摘するミカ。だがそんなミカに対して少しだけ誇るように見えなくもないダイチが空を見上げこう言った。
「スキルがあれば宇宙でも動ける。移動手段が乏しいのも鳥達が補助してくれる」
空にはいつの間にか人が騎乗することが出来るほどの体格を有した鳥が無数に飛んでいた。それに
「遅かったコケな?」
ミカたちの前に降り立った小さなニワトリ…ではなく今は大きな鷹のような姿に変身したニワタリであった。
「鳥って宇宙に行けるのか?」
「言っとくこっこ。そもそも宇宙に行けなかったのはプレイヤー達だけコケ。むしろなぜ今までスキルを持っていなかったコケ?」
「まじか…」
あれだけ一生懸命に作り上げた宇宙船を
「よく分からぬ奴らが襲ってきてるコッコ。護衛は多いことに越したことはないないコッコ」
「皆さん。ありがとうございます!」
「そ、速度や耐久面では宇宙船の方がいいんだぜ…ところで、浮島の防衛はどうすんだ?手薄になるだろ?」
切り替えが早いミカ。こう見えてナユカ達より歳上なお姉さんなのである。
「あー…それは…そこの跳ねるしか能がない耳長コケに…」
「誰が耳長だァ?お前が頼むから仕方なく引き受けたのであろう!?言っとくがな!勇者がどうにかできないなら、やはり浮島ごと叩き落とすからなッ!?」
「わかっておるコッコ…うるさいコケ…」
勇者の護衛中であろうと、今も様々なところでモンスターや機械戦闘機との戦闘は頻繁に起こっている。
もちろんここ。浮島も例外ではなかったのだが、アインズは勇者護衛に戦力を
手薄になった浮島と月はうさぎと残ったほかのプレイヤーが守る。ギビンは先程までお互いが戦っていたとは到底思えないほど。
この場を作り出したのは、ユキと目の前にいるニワタリ。
お互いが協力を成すほどの影響力が高いと言うことだ。
つくづくリリースと自分は違うのだと実感してしまう勇者。だが、そんな事は今考えても仕方がない。本人も気持ちを切り替え大樹の元へ向かっていた。
*
大樹の根元、付近に到着しミカは〔念話〕を大樹に届ける。
『お望みの勇者。ちゃんと連れてきたぜ?』
『感じておる。ユラグドシルの光。たしかに信用たり得る存在と判断した。勇者。名は?』
〔念話〕が聞こえたことに驚く暇もなく名を尋ねられた勇者。
「ギビンです」
『勇者ギビン。この実をユラグドシルの元へ』
天から風が吹き降り、あたりの木々の葉をを激しく鳴らす。はるか上空に光が産まれ。その光は雫となり。落ちてきた。
地面に当たると弾け飛び、そこから生えた芽はニョキニョキとツルを伸ばし一輪の花を咲かす。
咲いていた時間はわずか1秒。すぐに枯れてしまったがそこには小さな実がなっていた。
やがてそれは虹色に輝き
勇者ギビン。彼はそうして優しくその実を受け取った。
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