EC:168  迂回路

*>>ナユカ視点



『ナユカ!右に人型のモンスターがいるよ!』


『了解。さすがに見つかりそうだね?倒しに行くよ?』



『左は任せて〜』



 私たちは私の家を出てから、まず北にある闘技場に向かうため、北西方向に進んでいく。


 闘技場のある北側は今現在、大きな空間の亀裂きれつが入っていて通れないためだ。これを迂回うかいするのに西側をくるりと大回りして闘技場を目指す。


 途中出現しているモンスターを、ユキが〔地図〕と〔索敵さくてき〕〔立体〕〔解析〕などをもちいながら回避していく。

 今回のように回避できないような場合は、私たち2人でできるだけ迅速に対処。素早く倒していく。



 私とユキは今回それぞれ、5体ずつ相手取るような形だ。

 ゴブリンみたいだね?ゴブリンは弱くて助かるよ。



 そのまま2人で、低空〔飛行〕しながら群れに突っ込んでいく。


 グギャ!!


 向こうもこちらに気付き、変な鳴き声を上げながらその手に持った剣を振り回してくる。


 あまり周りのモンスターに気付かれたくないため。ユキも私も大きな音が出るようなスキルは使わず、ある程度まで近づいて魔弾攻撃かそのまま物理で倒すかにしている。本当は〔爆発〕とか使えばMPも省エネでいいんだけど、それを使うと絶対に他のモンスターも反応して余計な戦闘に発展するため絶対にしない。


 通り際に扇子で一体の首を切りながら、後ろから剣を振りかぶっているゴブリンに魔弾〔水〕を低速で顔面にぶつける。


 もちろんあまりダメージは無いが、そのゴブリンはその後、すぐにユキの攻撃による巻きえを喰らって凍ってしまう。ユキの攻撃は大体周りにも飛び火するのでいい判断だったと思う。

 その後、少し逃げ腰になっているゴブリンを投げナイフで仕留めつつ。自暴自棄になって突っ込んで来たゴブリンを倒して終了。

 すぐにユキの方を見ると、同着で終わったみたい。私たちはアイコンタクトした後すぐに進み出す。


 現実側のシステムの大半が止まっている以上、時間は限りなく少ない。私たちがどうにかしなきゃこの現状はさらに長引くだけだろう。



 ユキを先頭にどんどん〔飛行〕で進んでいく。途中モンスターがいるところは避け、タイミングが悪そうなら、隠れてやり過ごす。


 モンスターはゴブリン以外にも何となく名前に想像つきそうな個体がわんさかいた。



 オーク、オーガ、スライム、トレント、サラマンダー、スパイダー、ゾンビ。後あの空飛んでるモンスターは…。名前が出てこないので怪鳥でいいかな?



 本来はイベントとして登場するはずなんだろうモンスター達。



 そうしてしばらく順調に、かつ慎重に前進していたのだが…


『私たちの存在が検知されました』


『うそっ!?』


『ちっ』


 ナビィからの報告で私たちがプレイヤーとしてこのRBGに侵入していることがバレたみたい。あまり派手な戦闘はしてないのに!

 それにこの状況…結構やばいのでは?

 あとユキ。舌打ちしてるけど〔念話〕で私に聞こえるようにどうやってしたのさ…お行儀悪きょうぎわるいからやめなさい!


『ログイン状態の維持には問題ありません。絶対に死なないでください』


『『了解』』



 何とかゲームログイン状態は維持できるみたい。さすがナビィ。うちがほこる最新AIは伊達だてじゃない!

 敵に私たちの存在がバレたとしても、私たちがHP全損しない限りは抵抗の余地があるのだから!





*>>三人称視点





「…」


ガチャガチャガチャ



 彼女は、暗闇の中、物音も気にせず何かをいじっていた。



カチャカチャ



 そのいじっているもの。普段は生活していて目に入らないような場所にある。

 万が一にもつついたりしないようにするために隠されているものであり、そんなものを躊躇ためらいもなくいじる彼女は、ただただ無言でその電子機器の部品を取り外し、付け替え、よく分からないボタンを順番に操作していた。


カチャカチャカチャ…カチ!!


「…!…♪」


 そんな音ともにその部屋にあかりがともる。建物の電力が復活したようだ。


 彼女は嬉しそうににっこりしたあと、一体何が起こっているのかを探るため、自分の目の前にフォログラムプレートを出現させ操作しだす。

 しかしいくら操作しようともネットワークにつなげられない…

 外部からの接続が切られているため、どこに通信を飛ばせどもうんともすんとも反応は帰ってこなかった。


「?」


 明らかな異変、少し首を傾げた彼女は少し考えて外部も自分と同じように全ての機器が停止状態にあるのであろうと予測する。

 彼女はその場から立ち上がり身支度みじたくを整え、背中に少し大きなリュックを背負った。

 彼女は家の外へ向かう。都市は光を失い、そこには混乱する人々と数々の喧騒けんそうが広がる。


 やはり推測は正しい。彼女は戸惑う人達に視線を向けども、なにかアドバイスすることはできない。

 声をけることすらかなわないのだから。


 そして彼女は迷うことなく突き進む。目的地は朝霧あさぎり家。ユキの家である。


彼女の名前は、薮陰やぶかげ 希璃亜キリア。ゲーム内でキリアと呼ばれている少女のリアルであった。




*>>広場コメント




 なんか強制ログアウト食らった広場(外部入力)


・ネーム無し

・入場制限無し





753. まとめるとやっぱりみんな強制ログアウト食らったんだな…




754. 何か条件があるのかと思ったけど、そうじゃなくみんなおちたみたい。




755. 場所も関係ないよな?




756. 木星圏のわいはおちた




757. 火星同じく




758. 月も




759. 宇宙都市もやでー




760. その他細かい都市もおちた




761. だよなぁー




762. 時間は?




763. ほぼ皆同時だったよ




764. だな




765. 公式からなんか報告出た?




766. >>765 それが出てないんだよなぁ〜




767. >>766 なんのトラブルだろうね?




768. あれ?なぁ?地球の人いる?




769. >>768 どうした急に




770. >>796 いや、さっき出てこなかったなぁと




771. >>770 確かにいねーな




772. >>770 ほんとだぁー




773. …え?ガチでいないの?




774. 運良く誰も見てないのかな?




775. なんか他の情報漁ってたらちょこちょこ地球と連絡が取れないと噂が…




776. >>775 まじで!?




777. 電波障害か?




778. >>777 いや…。さすがにそれは無いだろう




779. え?地球行きの観光艦が次々帰ってきてるって!!




780. >>779 それだけじゃなくて。それ以降の運行が見合わせになってるぞ!?!?




781. え?ちょま。マジで何かあったんじゃね?




782. は?




783. は?




784. はい?




785. 何この警報




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