EC:167  エラーコードと混乱

*>>三人称視点



「どういうことだっ!!!」


 妙にフォログラムウィンドウが浮かぶ部屋の中。突如として上がる怒声は誰のものか…


「分かりませんっ!ただ地球との通信の全てが途絶えました!」


「ひとまず地球は無事かっ!?目視で確認が取れるか!?」


 怒声は焦りを含み、指示を受けた部下らしき人もその緊張感をひしひしと肌で感じていた。


「現在、目視での確認はできます。しかし、夜側の地域の発光が一切ありません!!」


「一体何が起こっているのだ…?唐突に、一斉に通信途切断、夜側も電灯がついていないとなると…。EMPでも撃たれたのか?いや、しかしそんな電磁反応はない…。それに地球規模でそんなことが起こったなら月も無事では済まない…」


 EMPとは、EMP爆弾。電磁パルスの略である。この時代からしてみればあまり使う頻度はない兵器であるが、それが惑星規模となると話は別だ。


「個別にその他のAIに信号を送るも、反応はありません」


「探せ!!なんでもいい、無事な機体は居ないか。それだけで対応が変わるぞ!」



「はっ!」


「他の惑星でその他影響がないか調べろ!」



「はっ!」


 色んな人がゴタゴタと行き交い。その所属のAIもフルで稼働。地球とのコンタクトを試みている。


「隊長!ご報告です!」



「なんだ!」


「現在、他の惑星圏の都市ではほとんどの機能が正常に稼働しております!」



「そうか!」


 一旦、この混乱が太陽系全体ではないことを確認した上司らしき人は少し安堵あんどの言葉を漏らす。


「しかし、一部、地球所属の観光艦や巡洋艦、調査艦などが一時的に運行不可能におちいったそうです!」


「なに?やはり地球をピンポイントで狙ったEMPか?」


 現状を整理すると、どうやら地球とその付近にいた宇宙船が影響を受けているらしい。


「いえ、その原因が、全て地球との通信が切れたことによる自身の座標の喪失そうしつによるものだそうです。その後、他の惑星の管制AIに接続し無事機能を復活させたとの事」


「無事なのか。なら良かった。だがしかし…。EMPではないのなら?何が起こっているのだ?」


 地球がおそらく大規模な停電のような状況なのだろう。上司は怒声をおさえ、できる限り理性のある質問を部下に確認させる。


「それについてですが…。もうひとつ、地球が主軸の一部サービスも止まっているようです。その中で一つだけ事前に不可解な停止が確認されているものが確認されています!」


「なんだ?」



「この大規模な異常事態に、先んじて救援要請とエラーを特定し機能を停止させたようです。そのサービス名は「Reality barrage Gamers」今流行りのゲームです」


「?ゲーム?一体なんの繋がりがある?」


 突拍子もないゲームの話。これには上司もよく分からないのか首をかしげた。


「分かりません。ですがエラーコードから状況が見えてくるかもしれません」



ーーーー


EC:001 「マザー沈黙」

EC:063 「ゲーム内のシステムエラー」

EC:999 「外部からの攻撃検知」


ーーーー


 エラーコードはゲーム停止に至った原因を特定しそれを第三者に伝えるためのもの。これを見れば何が原因なのか特定が可能となる。


「マザーというのはこのゲームの統括管理AIであります…ですが調べてみた結果、過去に地球の中枢区画の統括管理AIだったことも判明しました!」


「なに?なぜそんなAIがこんなゲームの統括管理AIなんてやってる?」


 統括管理AI。それは太陽系を管理するAIの上下関係に深く関わってくる。


ーーーー


太陽系管理中央AI


惑星中央管理AI


都市中央管理AI


地域管理AI 又は 施設管理AIなど


家庭管理AI 又は 店舗管理AIなど


機器管理AI


子機AI


ーーーー


 AIには大雑把な階級分けがある。上から下に行くにつれ、単純に数が増え。


子機AI  星の数程

 単純な作業を繰り返すAI。


機器管理AI  那由多くらい?

 子機AIに指示を出すAI。


家庭管理AI  いっぱい

 家庭内にある電子機器。玄関ロック。や各家庭内施設の機器管理AIに指示を出す。


地域管理AI  約3兆機

 地域事にある家庭。商業施設。公共設備の管理、情報統制などをし、家庭管理AIに指示を出す場合がある。


都市中央管理AI  約30万機

 さらにその地域管理AIを都市ごとに管理、統制するAI。地域管理AIからの報告を受信したり、送信したりする。大きな事故、犯罪などはこのAIが対応。地域管理AIに指示を出す。


惑星中央管理AI  約30機

 その惑星の全体データを守備、監視する。都市中央管理AIとの情報の送受信をする。災害や、さらに大きな事故などに対応。緊急時や、都市中央管理AIでは対応不可能な事態に陥った場合、都市中央管理AIと地域管理AIに指示を出す。


太陽系中央管理AI 2機

 太陽系人類の全てのデータを管理。滅多めったに指示を飛ばすことは無い。惑星の位置制御。オールト雲までの宇宙空間にある宇宙船の管理AIに例外的に指示を出すことがある。互いが互いを監視。


 となる。



 階級はゲームや、施設とかでも、これに該当する。


 マザーは元々、惑星中央管理AIクラスの階級であり、そんな高性能なAIがRBGのトップAIへと現在はなっているのだ。





「それが…」



 びーびーびー!!

 話をさえぎる大きな音。それにいち早く反応した部下は内容を上司に伝えた。


「隊長!!地球より通信が入りました!!あれ?でも…」


「なんだ!地球から通信が復活したか!?」


 変な事故。ただそれだけの事で終わるならまだ被害は少なかっただろう。だがそんなわけもない。


「いえ、AI専用IDがありません。不明、もしくは個人作成のAIからです」


「なに?」


 AIにはそれぞれ専用の個体識別番号が存在する。基本的には全てのAIに完備されているものだが…


「どうしましょう?」


「録音しながら私が応答する。各員はその他地球の調査を続けてくれ」



「はっ!通信を開始します!」






 …その通信の回線を繋ぎ、部屋の中は先程と打って変わって静まり返った。


「こちら月防衛省観察本部。何者か応答せよ!」


『こちら地球圏。太陽系外探査研究所所属、所長の米嶋 勇人だ』



「なに!?あの有名な米嶋博士か!?」


 その通信の先から現れた人物はナユカの父。勇人。

 勇人は博物館の主であり、太陽系でもかなりの知名度をほこる程度には功績こうせきを上げている。


『おや?知っているのなら話は早い。現在の地球の現状を各惑星都市に報告、及び、援軍の要請を頼みたい』


「了、了解しました!ご報告をお願い致します」


 上司がまるで別人のような丁寧な対応を見せ、部下たちはとてもおどろいた。声こそ出さなかったものの。上司は普段から厳しくよく怒声をひびかせているらしい。


『現在、地球は地球外から来ている「敵」からの攻撃を受けている。それは地球のAIを統括管理している中枢区画ちゅうすうくかくへのサイバー攻撃だ』


「さ、サイバー攻撃?そんな馬鹿な!!一体誰が!!」



『まだ確認は取れていないが、データをそちらに送ろう。前々から地球の防衛省の者と防衛について話していた。「敵」の存在だ。太陽系外生命体からの攻撃である』


 淡々と告げる勇人。だがしかしこの場にそのあまりにも突拍子のない言葉になにかの冗談なのか?と危ぶむものも出てくる。


「太陽系外生命体…。未だ発見されてない敵なのですか?少し信憑性にかけますな」


『仕方ない。詳細は後でデータとして送ろう。くれぐれもこれから先のことは極秘ごくひ事項だ』



「了、了解しました!」


『紹介しよう。私の妻。花恋だ』


『こんにちはー』


 だがそんな月の面々の考えは突然聞こえたゆるい声のせいでかき消されるのだった。



「「「?」」」



 なぜこのタイミングで超有名人の妻に通話越し自己紹介をされたのか?


「えっと…。博士?奥さんがどうかなされたのかな?」


『彼女は太陽系外惑星、ガーデンプラントの姫。つまり太陽系外生命体だ』




 …見たことがない。確認が取れないと言うなら実物を見せてやろう。勇人も花恋も周りにそのことを基本喋らない。だが娘である那由花のためなら別だ。


「「「「???」」」」


「いささか信じられないのですが?」


 だが上司でもただの冗談にしか聞こえない…つまり防衛省側でそのことを知る必要も無い程度の男だったのだろう。


『ふむ…。君では話にならないな。君の上司…。そこのトップを連れてきてくれ』


「!?何を言って…!!」


 唐突に突き放され、ムキになる上司。だがその言葉をさえぎるように…


「もう良い」


「…?…!!?司令!!」


「「「!!!」」」


 司令と呼ばれた男が入室してきていた。


「君のことは因幡いなば君から聞いているよ。米嶋博士」


『なるほど、話が早くて助かる』


 因幡。以前衛星軌道ポータルでであった防衛省の者。彼はなかなかの高位の人物で米嶋家がどういうものなのか知っている数少ない者だ。

 そしてそんな彼から話を聞いているということは、この司令と呼ばれた人物もかなり高位の人間なのだろう。

 話が通じたことに安堵あんどしたのか。少しほっとしたような勇人の声。


「それで、かねてより我々が警戒してきた敵が地球を攻めている。その認識で間違いないかな?」


『ああ、間違いない』


 交わされた情報は少ない。だがお互いが事前に認識しているのならそれだけで充分であった。


「わかった。できる限り応援をよこそう。何が欲しい?」


『地球防衛の一時的な指揮権。それとRBGの上位プレイヤーを頼む』



「承知した。両方とも許可しよう」


「「「!?!?!?!?」」」


「ちょっ!?司令!」


 まるで状況が理解できない周りの人間は全員司令を凝視ぎょうし。こいつまじかよ!?とでも言いたげな表情である。


『感謝する』


「地球防衛の指揮権って!!正気ですか!?」



「もちろんだとも」


「な、なぜそんな。指揮権ですよ!素人が務めていいものじゃ…」


 防衛省の職員というプライドがひねり出した抵抗。


「そもそも、我々が持ってた時点で何ができる?「敵」とは聞いていたが、それが私たち防衛省に現状を打開する計画が出せるか?」


「そ、それは今から…」



「今から考えたとして、いつ頃軍が動くようになる?」


「そ、それは…」



「その間に何人が死ぬと思う?」


「す、すいませんでした…」



 一刀両断。事実を陳列ちんれつするだけだが現状を理解させるのには最適だ。


「今回のことに関しては彼らの方がよく知っている。元々、彼らが専門で研究してきた敵だ。彼らに指示を出してもらった方がいい方に働くだろう。それに米嶋博士はな。我々よりも操船や、AIのあつかいにたけておるぞ」


「そ、それほどですか…」



「分かったら軍艦の準備を。これは戦争だぞ!」


「はっ!」


 慌ただしく全員がフォログラムウィンドウを操作し始める。各所への連絡や対応を即座に指示し始めていた。


『説得済まない』


「いやいや、我々にはこれぐらいしかできない」



『感謝する』


「それより…。RBGというゲーム…。それがどう関係しているのか聞いていいかな?」


 勇人達がどういうものなのか知っているが、RBGについては知らないらしい。勇人は簡潔にゲームと現状を伝えた。


『敵はマザーの元々持っていた権限に目をつけたようだ。マザーは元中枢区画の管理AI。それぐらいの権限は現在でも持ったままだったというわけだな。それにRBGは、AIが考えたゲームでもあるが…。AIが考えた地球防衛手段として準備開発されたとうちのAIが導き出している』


「なるほど…。まことか?」


『はい。私トビィとナビィが解析した結果、そう結論づけました』


 見知らぬ声の割り込みに司令は反応する。


「ん?」


『うちのAIです。そちらへの通信手段を作ったのもこの子達です。この子達はガーデンプラントの精鋭機で、ここのトップと同じくらいの処理ができます』


「そんなのが2機もいるのか…」



『悪さは…。しないですよ』


 司令は世渡り上手である。即座にこのことを追求することは良くないと察したようだ。


「今は聞かなかったことにしよう…」


『緊急回線にてデータを転送します』


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