F152 This is the dream of little things that. For some reason, I remember



 目の前には何も無い。ここは黒の「世界」。暗闇の中に私はただ1人ぷかぷかと浮かんでいる。


 その何も無い空間には音も無く。風もない。空気があるのかすら怪しい。寒いわけでもなく。暑くもない。強いて言うなら適温。体の感覚すら無い。




 


 …って。今私どういう状況!?


 なんでこんなところにいるのかすらわからず辺りを見回すも、見回すことができているのか怪しいほど何も無く。感覚もない。


 そんな暗闇の世界が少しだけ明るく光り出す。


 違う…。光っている訳じゃなく。色が有る。という方が正しい。ふわふわ浮かぶような、モヤモヤ浮かぶような。曖昧ななにかの光がこの暗闇の空間に色付いた。


 そして次第にひとつの光へと纏まっていく。



「やっと見つけましたよ…」



 その何かはいきなり喋り出したかと思うと私の方へ近づいてきた。


「だれ?」



 思わず聞いてしまったが、そもそもその色に誰などという概念があるのか疑わしい。だがその色は答えてくれた。


「そうか…直接出会ってる訳じゃないからね。私の名前は「一花いちか」あなたは?」


「私は「那由花」。米島 那由花」


「那由花か…。いい名前だね。那由多の花と書いて「なゆか」。将来、君にたくさんの花が咲きますように。そんな願いが込められた…いい名だね」


 私の名前を聞いて妙に深堀りされながらも、自分の名前をめられたことに悪い気はしない。この光…。一花さん?の口調はどことなく落ち着かせてくれるためか…それともまた別の要因か分からないが、私はこの一花さんを悪い人…人?とは思わないようだ。


「ありがとう!私も好きなんだぁー…」


 そう素直に話すことができた。



 それを聞いた一花さんは満足したのか…。そんな雰囲気を何故か感じ取れる。…何故か伝わって来るのには訳分からないが。




「ねぇ、那由花」


「なーに?」


「あなたは今、楽しい?」


 いつかのユキにも聞かれた。「今、自分は楽しいか?」という問いかけにも私は素直に答える。



「楽しいよ。パパやママ、ユキに最近だと友達も増えて…。「リリース」のみんなとも仲良いし、ゲームにログインするのが楽しい」


「ゲーム?」


「そう言う遊びなんだぁー…」


「へぇー、私の時にはそんなもの無かったんだけど、時の流れはこんな技術も産むんだね」


 何か、ゲームの存在そのものを知らないような言動が気になるが、今の時代にそんな人はいないのではなかろうか?


「花恋は元気にしてる?」


「ママと知り合い?」


 一花さんがママの名前を知っているようで私にそんなことを聞いてきた。


「知り合い…。と言うよりも…。子孫?可愛い私の「家族」だよ」


「家族?」


「そうよ。花恋も、そして那由花も私の家族」


 え?どういうこと?私の家族はパパとママだけだよ?ママは故郷に家族がいるし、パパの家族には一花さんなんて人はいない。ママの知り合いということは、この人はママのお母さん!?いや、ママのお母さんは「菊花きっか」という名前だったはずである。前に衛星軌道ポータルがあるビルの中で、初めて聞いた故郷の話でそう聞いたはずだ。


「ママのお母さんは「菊花」さんだよ」


「そうね。菊花も私の家族よ?

 他にも順番に私の娘の香花こはる

 孫の花輝はるき

 紗綾花さやか

 怜花れいか

 梅花ばいか

 鳳花ほうか

 楓花ふうか

 灯花とうか

 直花ちか

 晴花はるか

 瑞花すいか

 遊花ゆうか

 柚花ゆずか

 千由花ちゅか

 仁花にか

 蒼花そうか

 姫花ひめか

 そして菊花。

 花恋。

 

 みんな「家族」。そしてあなたも家族なのよ?」



 言葉も出ない。それが…。その名前がもしもホントなら。今、私の目の前にいるのは…


「始祖様!?」


「あぁ、いつからかみんな私のことをそう呼ぶわね。一花でいいよって言ってるのに」


 ほ、ほんとに始祖様ならなんで…今私の目の前に!?だって始祖様って…。なんて言えばいいか分からないけど始祖様だよ!?超年よ…「コホン」…始祖様だよ!?


「私はそう言う能力なのよ。自分を枯らせられずに、今もこうして私の新しい「家族」にその「花の約束」を告げる。そう言う約束。だから私は死なないのよ。死ねない。その約束の時までは起きることもない。ただただ、そこに「植物」として存在し、使命を果たす時だけ目覚めるの。だから、私の唯一の楽しみは、家族を見守ること。ただそれだけ」


「…、そ、そんな…」


「花恋は優しい子だから、きっとあなたには教えていないのね。私のことは知っているようだったけど、ガーデンプラントのことについてはほとんど知らせていない。…きっと、戦争に巻き込まないために」


「じゃあ、一花様はどうして私と話せているの?」


「それも能力よ?本当は産まれた時点で会いたかったのだけど、まさか星系外のはるか遠方で産まれちゃうんだもの。探すのに苦労したわ。さて、そろそろ私の使命を果たそうかな」


 使命を果たす。…それは?


「那由花」


「はい」


「今は距離が遠くて、薄れた力の波動でしか判断できていないわ。もしかしたら違うかもしれない」


「はい」


「あなたの花の名を私が告げるわ」


 本来なら産まれたその時点で告げられる花の名前。私の「花の約束」。



「あなたの花の名は❨イチゴ❩。あなたは眼に映る全ての光景をより詳細に分析することができるわ。ただ、少し、違う力も感じ取れるの。よく分からないけど、少しずつ開花していくと思うわ」


 ついに明かされた私の能力。花。


 イチゴ…。ん?イチゴって花か?




「そろそろ時間ね。またいつか会いましょう?那由花。今度は会えるといいな」


「うん。またね」








*








 目が覚めると、私はベットの中にいた。



 え?夢?いや…。でも、はっきりと覚えている。私の花は❨イチゴ❩だ。何故かしっくり…くる。



 私は急いで着替えて部屋を出ていくのであった。






第四話 「F」ounder









 一花(いちか)❨ワイルドベリー❩

 香花(こはる)❨マリーゴールド❩

 花輝(はるき)

 紗綾花(さやか)

 怜花(れいか)

 梅花(ばいか)

 鳳花(ほうか)

 楓花(ふうか)

 灯花(とうか)

 直花(ちか)

 晴花(はるか)

 瑞花(すいか)

 遊花(ゆうか)

 柚花(ゆずか)

 千由花(ちゅか)

 仁花(にか)

 蒼花(そうか)

 姫花(ひめか)

 菊花(きっか)

 花恋(かれん)❨クロユリ❩

 那由花(なゆか)❨イチゴ?❩


 

 






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