ロゴブロックで創るダンジョンマスター・異世界二重生活・セカンドライフ

久城征博

001:城砦都市

 すごい、緑臭い……。


 踏み固められた土の道。かなり凸凹も目立つ。林道というよりはちょっと広めの獣道に近いだろうか。

 人が……四人並んで歩けるギリギリくらい。これ、荷物の運搬も背負子を使わないとダメなんじゃないだろうか? 手押し車や荷車とか馬車は使えない。


 情報の通り、半日ほど一本道を進んでいくと密度の高い森を抜けた。緩やかだが下り坂になっている。


 その先にいきなり人工物が見える。


 ここまで緑と茶色で塗りつぶされていた世界に、異質な、歪な異形=石壁が登場した。


 目の前にそびえ立っているのは城壁。高さは4メートルくらいだろうか?

 複雑な形をした石が積み上げられている……日本のお城の石垣のようだ。レンガ等のキチンとした直方体で構築されている壁ではない。


 何が言いたいかといえば、見た目が西洋風の城壁都市ではないということだ。


 周辺は鬱蒼としたジャングルだ。そのためだろうか、うーん。


 ここはもっとわかりやすくいうと、城壁都市と聞いて、ドイツのノイシュバンシュタイン城的な西洋のお城と城下町を、想像していたが……実際には、世界遺産のカンボジア、アンコールワットの城壁付き版といった感じだろうか?


 ここからだと中は余り見えないが、先ほど降りて来た高台から見えた景観からはそう思えた。


 それにしても、ここはどういう地域なのだろうか? 


 広葉樹林帯にも関わらず、ツタやシダなどの熱帯系低地植物も共生している。

 地球の常識から考えられる動植物の生態とは違っているのだろうか? まあ、その可能性も高いか。なんたって魔法に魔物に、神様がいる世界だもんな。


 城壁に比べて、それほど大きくない城門に近付いてゆく。木と鉄で出来た門。幅二メートル、高さは三メートルといったところだろうか?


 正面向かって右に見張り小屋の様な建物が出張っている。


「何者だ?」


 誰何の声がかかった。うん、良かった。ちゃんと言葉を理解出来るな。問題は話せるか? だ。


「旅の商人です。数日前に盗賊に襲われまして、命からがら逃げて参りました。そのため、ギルド会員証等も奪われてしまいまして……」


 どうだ? ちなみに俺が話しているのは日本語だ。ただ。「通じろ」と思いながら話している。シロはこれでいけると言ってたが……。


「それは災難だったな。では裁きの水晶に触れよ」


 おおー通じた! よし、よし。


「畏まりました」


 見張り小屋の中に通される。


 赤茶色の板金を貼り付けた革鎧に身を固めた兵士が三人。全員、髪の毛の色は浅い茶色系だ。奥に初老の隊長? が座っている。髭面が似合うな。左右に若手。右の人、手は腰の剣に掛かっている。若干力が入っている……様だ。


 直径十センチ程度の水晶が窓口の台に乗せられた。罪に反応するんだっけかな? 咎人の場合、赤く点滅するらしい。


 軽く手を乗せる。フッと白い光が発せられた。


「よし、問題なし」


「確認」


「で、何処の商人だ?」


 その場の緊張感が一気にほぐれた。


 ああ、そうか。


 水晶で証明する前は、俺が盗賊の一員とかで襲いかかって来る可能性なんかも考えられたわけで。


「遠方の森の出身で、魔道具を取り扱っております。懇意にしていただいている商店は少ないのですが、出自から珍しい魔道具を取り揃えて商っておりました」


「奪われたのは荷馬車か?」


「はい、マールの一頭立ての荷車でございます。ただ、積んでいたのはほぼ、認証前の魔道具ばかりでして……私がいなければガラクタ同然なのです。封印もかけてありましたし。商売品を……と思うと悔しくはありますが、50以上の盗賊に囲まれまして」


 そう言って、目線を下げた。


「おう、それは逆に運が良かったな。しかし護衛はいたのだろう?」


「はい、魔導人形ゴーレムが護衛代わりだったのですが。ソレを囮に多勢に無勢と早々に逃げましたので……」


「そ、それは……災難だったな」


 魔道具は押し並べて高級品である。人が扱えるようなゴーレムの価値は高い。それを失ったというのは大損失であると思ったのだろう。


「商人、名は?」


「はい、サノブと申します」


「うむ。盗賊の件、報告はしておこう。今日はもうしばらくすれば日が暮れる。早めに宿を取るがいいぞ」


「ありがとうございます」


 さりげなく、テーブルに銅貨4枚を並べる。こういった賄賂……いや、チップや心付けが非常に重要なのだ。特に弱小零細個人事業な行商人には。兵士に1枚ずつ。長に2枚。


「カンパルラ城砦都市は旅人を歓迎する」


 兵士の一人がそう声を掛けてきた。お決まりになっているであろうその定型句は、なかなかグッと来た。


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