第8話:因果応報(ざまあ回)

 

 ファブール王国王都、ファブルヘイム――Aランク冒険者パーティ【輝けるロータス】拠点。


「まままま、待ってくれ! 俺は何も知らん!!」

「ああん? てめえのパーティの奴だろ! このクオーツって奴は!!」


 あの、クオーツを売り飛ばしたラルスが、椅子に縛り付けられていた。


 彼の前にいるのは、黒ずくめの男達だった。マスクで顔を隠しているが、怒気を隠し切れていない。


「クオーツって奴が脱走してリンドブルムのトカゲ共に鉱山のことを暴露しやがってせいで……うちの商売が台無しだ! ファブール王国も政治的に相当危うくなる。分かるか? これは全部、お前の責任だ」

「ま、まってくれ! それはあいつの独断で俺は悪くない!」

「あいつは、お前の指示でやったと証言しているが?」

「う、嘘だ!!」

「というわけで……まあお前には死ぬより辛い目にあってもらうから覚悟しろ。ああ、このパーティの財産も根こそぎもらっていく。それで良いな、パスーラ?」


 男の声に、背の高い青年が優雅に頷いた。高そうな鎧と剣を装備したその青髪の青年は微笑むを浮かべた。しかしその目には一切の感情がない。


「構いませんとも。そもそも彼が冒険者志望者を貴方達に売って私腹を肥やしていたことは僕も知りませんでしたから」

「ちょ、ちょっと待ってくれパスーラ! あんたが全部指示してたことじゃないか!?」

「さて……なんのことやら? まあ、ようやく念願の王国騎士団に入れたので、冒険者は廃業だよ。それでは、好きにしたまえ」

「パスーラてめえ!!」

「連れていけ。魔術師らしいからな。死なない程度に生かして、魔力供給の奴隷にするぞ」

「ひっ、待ってくれ、それだけは! それだけはやめ――ぐえ」


 殴られて気絶したラルスを、男達が運んでいく。


「それで……そのクオーツとやらはどうするつもり?」


 パスーラの言葉に、男が背を向けたまま答えた


「ん? ああ。勿論……殺すさ。リンツ一家に刃向かったことを後悔させてやる」

「なるほど……まあ、頑張ってね」


 男達が去り、独り残ったパスーラが、天井を見上げた。


「ふふふ……まさか本当に生きてあそこを脱出できるとはなあ……やるなあクオーツ君。会うのが……楽しみだよ」


 そう言って、パスーラは妖しく微笑んだのだった。


 陰謀渦巻く王都に――クオーツが帰還する日は近い。

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