第14話 四人目の乗客 中編




「あの、、、寒くないですか?

良かったらこれ、着てください。」


ジャケットを脱ぎ、ミラー越しにお客さんと目を合わせて話しかける。

彼女の服装はあまりにも寒そうだったので、自分の服を貸すことにした。


「ありがとうございます。

優しいのですね。」


ジャケットを受け取ると、肩にかけてくれた。

僕は大きいほうじゃないが、華奢な彼女が肩にかけるとジャケットはダボダボだった。

汚れない仕様で助かった。

臭い!なんて思われたら立ち直れる気がしない。


チラッと見えた顔はハリウッド女優として映画に出てもおかしくないほどの美人だった。

僕と同じくらいか、少し年上に見える。


「どうしてあの森に?」


ジャケットを受け取って着てくれたことで、心を開いてくれた気がして聞いてみた。


「わからないのです。

気づいたらあそこに居ました。」


きっと魔物に連れてこられたのだろう、かわいそうに、、、。


「そうだったんですね。

ひとまず今日は僕の家に泊まって頂いて大丈夫ですよ。

部屋、余ってるので。」


いろんな意味で太っ腹な王様が建ててくれた家は、2回建ての4LDKだった。

一人暮らしなので、部屋は2つ程しか使っていなかった。

寝室と、荷物を置く部屋に分けても2つは余ってしまったのだ。


「本当にお優しいんですね。

何から何まで、ありがとうございます。」


彼女に少しでも休んで欲しかったし、もう何を話していいかわからないからその後は黙っていた。

(決してモテないから女慣れしてないとかではない。元の世界では女の子と話したことくらいはある。)


彼女もそれ以上は何も話さなかった。

そっとしておいてほしいのか、余程疲れていたのだろう。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る