若狭、特に美浜について

島尾

少し前の話

 人生は海に例えられる。いろんな海がある。天候その他によって状況も変わる。私の生まれた高知の海は、太平洋側で、打ち寄せる波は高かった。だが今いる若狭湾(美浜町の海の駅の前)は、ザバーん…じゃぁぁぁぁ…ジャバーん、ざぁぁぁぁしゅゎゎ…

 と、穏やかに感じる。

 その水平線は、夜になると不可視境界線に名を変えるという。

 両隣りに陸でつつまれて、護られているような、それが、この穏やかさを作っているのだろう。

 高知は、こう、「全開!」といった感じだった。


 しかし、若狭湾も沖に出れば様相が変わる。

 例えば昨日の蘇洞門そともまでの遊覧船において、甲板は揺さぶられ、風が強すぎて、スマホを落とすまいと必死だった。

 まあそれは、船の上だからだ。

 しかし冬になれば、波が崖に強く打ち付け、荒々しい姿を見せるという。

 室戸岬は、台風でそんな風になるが、若狭湾(蘇洞門)もヤバいんだろう。その上雪も降るから、尚更ヤバいんだろう。


 そんなことを想像しながら、まだこの目の前の穏やかな音を聞いている。

 しかし想像しても分からないからなあ。

 行くしかないだろうか。冬に。危険だからいけないのか?


 ふと今、後ろを見た。近くに山があってその向こうにまた山がある。

 後ろも護られていた。さっき歩いてきた道だったのに、今気づいている。

 そんなことがあるのか。私はバカなんだろうか(バカっぽいと自覚はしている)。


 しかし気がついた。

 気がつかないのとは大きな差だ。


 私はいつまでもここにいることはできない。もうそろそろ、動き出そうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

若狭、特に美浜について 島尾 @shimaoshimao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ