第20話・不思議な部屋と匠を超えちゃった弟子

 ゴートはゆっくりと流れる時間の中で鉄のインゴットにゴブリンの魔石を砕いて魔鉄を造っていきます。本来の魔鉄の作り方は鉄を錬成しつつ魔石を混入させながら鉄を打つようです。


 アリシアは鑑定していくうちに、いつの間にか様々なスキルを入手していきました。トンテンカン!トンテンカン!と鎚の音がリズミカルに響いていき、次々と新しい名剣や魔道具が産み出されていきます。


 アリシアの鑑定スキルは大幅にレベルアップし、魔道具作成スキル、鍛治スキル、ルームスキルを入手しました。


「どうじゃ?鑑定で良く観察してみたかの?アリシアちゃんも造ってみるか?」


「はい、先ずは仕事の道具を造ってみますね!」


「ほっほっほ、では、やっていくかの……時間はたんとある。この中では時間がゆっくりと流れておるが、腹は少し減るんじゃ。たまに何か食べんといかんぞ。まあ、実際は感覚的に1週間位は食べんでもなんとも無いがの」


《あー、これはいかんスキルを覚えそうだな……》


「ふむふむ、時間の概念は魔法に応用出来ますね……」


 アリシアは魔道具ルームの中を鑑定して簡易時魔法スキルを入手しました。


 アリシアはゴートの指導を受けつつ自分専用の鍛治の道具を造っていきますが、ゴートの誤算はアリシアの才能が凄まじく高かった事です。


 ゴートとアリシアは寝食を忘れて物造りに没頭して、ルーム内の体感で5日程色々な武器や防具を造り続け、各スキルは常に上がっていきました。


トンテンカン!トンテンカン!トンテンカン!……


「ふむ、良い出来じゃ!その鍛治道具で鉄を打つんじゃ」


「はい、やってみます!」


トンテンカン!トンテンカン!トンテンカン!……


 アリシアは鉄のインゴット10本からショートソード10本を造り上げ、鑑定、鍛治のスキルが上昇します。


「ほっほっほ、良いぞ!その調子じゃ!ワシの一番弟子がこんな素晴らしい娘だとは運が良いわい!」


「ありがとうございます!」


《アリシア……お前万能過ぎるだろ》

(そうですか?)


「よしよし、造った剣に魔石を砕いて強化していくんじゃ!」


「はい!」


トンテンカン!トンテンカン!トンテンカン!……


 アリシアは自ら造ったショートソード10本をホーンラビットの魔石10個で強化して業物のショートソード10本を造り上げ、さらに鑑定、鍛治スキルのレベルを上げていきます。


「本当に筋が良いわい!こっちを本業にしたらどうじゃ?」


「うーん、私は冒険者を始めたばかりですので……」


「そうか?なんなら何時でも鍛治職人を名乗って良いぞ。では、さらに魔石で業物のショートソードを強化するのじゃ!」


「はい!」


トンテンカン!トンテンカン!トンテンカン!……シャカシャカ……シャカシャカ……


 アリシアはさらにホーンラビットの魔石10個で業物のショートソードを強化して鋭い業物のショートソード10本を作成、鑑定と鍛治スキルがレベルアップしました。


「こりゃ……素晴らしいわい!初弟子がワシを超えたんじゃなかろうか?」


「そうでしょうか?」


「アリシアちゃんは付与魔法は使えるのかね?もしかすると……魔剣や聖剣が造れるやもしれん」


「えーと、やってみますね」


「ふむ、ここから先は古の鍛治技術の領域じゃ!魔剣が造れればワシを超えて歴史に名を残せる名工の仲間入りじゃな!」


「頑張ります!」


バチバチバチバチ……キィン


 アリシアはゴートに言われた付与魔法を使いながらホーンラビットの魔石10個と鋭い業物のショートソードに炎の上級魔法フレアを付与して魔剣・無銘のショートソードを10本作成します。


 これにより、鑑定、魔道具作成、鍛治レベルがアップし、魔剣創造スキルを入手します。


「ふむ、こりゃ、完璧に魔法剣じゃわい。しかもなかなか素晴らしい出来じゃ!正直、ワシが教えれる限界はとうに超えとるわい!ほっほっほ、やはりアリシアちゃんは素晴らしい逸材じゃったな。せっかく造ってやった魔剣が無銘じゃ可哀想じゃろ?魔剣に真名を付けてやるんじゃ」


「真名ですか?どうやったら良いんですか?」


「ふむ、イメージじゃな。この魔剣に何の魔法を付与したんじゃ?」


「炎の上級魔法です」


「よし、古の魔剣鍛治師は魔力で剣に銘を刻んだらしい。ワシらは隠れた部分に自分の銘を入れるんじゃが……ほれ、魔剣パニッシャーは刀身に銘が入っとるじゃろ?古い文字でパニッシャー……オーレインとな」


「オーレイン?」


「ふむ、オーレインはワシの師のご先祖じゃったな……やはり、師のご先祖も名工じゃったか。では、魔剣を手に持ち魔力で銘を刻んでやるが良い」


「こんな感じかな?」


キュイイイイイイン


『我らはアリシリアンフレア……造物主に感謝を!』


「ほっほっほ、やりおったわい!新しい名工の誕生じゃ!」


「うわー、本当に貴方達って魔剣なんですね」


魔剣・アリシリアンフレア《10本で一つの魔剣……特級名工アリシア初期の傑作》


 こうして、ルーム内の体感時間で5日……現実世界では5時間程のゴートの鍛治指導は終わり、アリシアは新たなる名工の仲間入りを果たしました。


 単純にパニッシャーの鞘を造って貰うだけの筈が、いつの間にか魔剣を造る名工の誕生になるとは……アリシアの才能は凄まじいものが有ります。


 この日は数多くのスキルを手に入れた実り多き一日でした。


 






今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!

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