虚無編第4話 救出
気がつくと資料室にいた。しかし、自分には分かっていた。あの場所で話されたこと、自分のこの力のことも事実だと。
俺は資料室を出て、2人の元へ向かった。
「まずいな。もう時間がないか…」
「エクスバースちゃん!私なら大丈夫だから、私を向かわせて。」
「だめだ、お前がいなくなったら…」
「どうしたんだ。」
「あ、お兄ちゃん。もう大変なの。」
「そうだ、オリジナルがもう耐えられるか怪しいところにある。だが、彼女がいる場所は虚無の女神の空間内。あれに耐えられる者なんていない。」
「俺が行く。」
「な…お前が今消えてしまっては困る。」
「だめだよ!お兄ちゃんは私が救うのを待ってて…」
「いや、大丈夫だ。俺は対極の力を手に入れた。それがあれば、虚無の中でも俺との境界は最も明確だ。それが俺を侵食することはない。」
「…分かった。虚無の空間はこのポータルから行けるが帰りは保証できない。」
「ああ、帰り方はわかる。」
「じゃあ、行ってきてくれ。」
ポータルの中に白い空間が広がっている。俺はその空間に飛び込んだ。
「う…ん。ここは…」
私は白い空間にいた。何も考えられない。何かが分かってもそれが思考に至るまでに消えてしまう。
「目覚めたか…」
そこに真っ白な人影が見えた。白に溶けて見えないはずなのに無意識にでも誰かがいると分かる。
「結局思い違いの失敗作だった。アレは私の思っていたものとは違う。ああなることはないと思っていたのに…」
私はそれを聞いていてなぜか悲しくなった。ああ、やっぱり…これって…
私は彼女に話しかけた。
「あれは私にとっては貴方と同じだった。もう少しでいいから幸せでありたい。」
抵抗しようと思ったが、左手が自由に動かない。左手と左足はすでに消えてしまった。
それでも私の気持ちは変わらない。なくなったとしてもそこに在ると思い込めばいい。目を閉じればそこは私の世界。何かを消すことも作ることもできる。私は目を閉じて左手足をイメージした。すると、目を開けた時人形のような手足がついていた。
「な、なぜ失敗作がコントロールできてるの?」
「私はあなたみたいに逃げたりしない。たとえお兄ちゃんがいなくなっても私のそばにいつでもいるから…」
「よく言ったな。」
そこには、お兄ちゃんがいた。
「お前はどうしてここにいられる!」
「知り合いからちょっとした力をもらった。ただそれだけだ。」
「ちっ、アイツか。イレギュラーの分際で…まぁいい。お前たちはここで処分しなくても刻は来るのだから…」
そう言って白い何かはそのまま気配と消えた。
「お兄ちゃん…」
「待たせて悪かったな。辛かっただろう。」
「ううん、お兄ちゃんが来てくれて嬉しい。」
私たちはそこでいつまでも今の幸せを感じていた。
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