PCで出会った彼女は実は母親だった件
茜カナコ
第1話
最近はコロナの影響で、同人誌の即売会にも出かけられない。
俺は退屈を持て余して、PCをつけて検索した。
<同人誌、Web、即売会、オンライン>
すると、いくつかのサイトが現れた。
俺はその中から、入場無料のイベントを選んだ。
「こんにちは!」
チャット用のアバターに台詞を言わせ、中に進む。
俺のアバターは、好きなアニメのオンリーイベントの会場を進む。
すると、ミユキというアバターが話しかけてきた。
「こんにちは、ユーちゃん、はじめまして。あなたもこのアニメ好きなの?」
俺の名前は五十嵐(いがらし)裕太。それで、一文字取ってユーちゃんと名乗っていた。
「はじめまして、ミユキちゃん」
俺はチャットを続ける。
「そうだよ。じゃなきゃオンリーイベントなんて、来ないよ」
「ユーちゃんの好きなキャラは?」
「俺は主人公押し」
「あ、同じだ! 気が合うね」
俺はミユキちゃんとチャットをしている内に楽しくなってきた。
「当たり前だのクラッカーだよ!」
「なにそれ、古すぎ」
「知ってるのかよ!?」
ミユキちゃんは時々古い言い回しをしてくるので、俺は笑ってしまった。
「ミユキちゃんは、何歳くらい? 俺は16」
「女の子に年を聞いちゃ駄目よ」
ミユキちゃんに怒られてしまった。
「じゃあ、またWebのオンリーイベントで会いましょう」
「うん」
俺がPCの電源を落とすと、母親からご飯よと、声をかけられた。
「あれ? 母さんスマホ抱えてどうしたの?」
「ううん。何でも無いわよ」
母親は慌ててスマホの電源を落とした。
「じゃあ、食事にしましょう」
夕食は俺の好物のカレーだった。
「今日は楽しい友達が出来たわ」
「へー」
母親が珍しく、笑顔で俺に話しかけてきた。
「ユーちゃんって言うんだけどね」
「ぶはっ」
俺はむせてしまった。カレーが変なところに入って、苦しい。咳き込む俺に、母親は水を持ってきてくれた。
「まあ、趣味の話が合ったのね。楽しかった」
「そうですか、よかったですね」
「ったく、なんでみゆき何て名乗ったんだよ」
「え? なんか言った? 裕太?」
「別に」
こうして俺の淡い恋心は見事打ち砕かれてしまったのだった。
PCで出会った彼女は実は母親だった件 茜カナコ @akanekanako
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