5ー42
「三崎さん、ちょっと聞きたいことあるんだけど、いいかな?」
Realのスタイリストをしてくれてる三崎智花さん。
歳は27、8かな。
外部の人じゃなく、ルピアーノの衣装部の人。
この業界には珍しく、静かでおとなしい感じの子。
「はい、なんですか?」
衣装をハンガーに掛ける手を止めて、俺の方を向いた。
「あ、手 止めなくていいよ。それ、やりながらで」
「そうですか。じゃ、やりながら聞きますね」
そう言って、またハンガーに服を掛け始めた。
「女の子ってさ、初体験の相手って、忘れられないとかって、そうゆうのあるのかな~?」
「えっ?」
そう言って三崎さんの動きが止まった。
「あっ!ゴメン、ゴメン!変なこと聞いて!」
何を聞いてんだ俺。
これ、ただのセクハラだろ。
「あの……」
と、下を向いた。
「あ!マジで!ゴメン!セクハラみたいこと聞いて!大丈夫!も、話 終了で!」
そう言って俺は立ち上がった。
「あの、keigoさんがエロ話で言ってるんじゃないのは わかってるんですけど……
私の話なんて、なんの参考にもならないと思うんで……」
と、更に下を向いた。
「ほんと、もういいよ。俺、ちょっと一服してくるね」
そう言って部屋を出ようと歩き始めた。
と、後ろから、
「keigoさん、役に立たない話でも、いいですか?話しても」
と三崎さんが言った。
俺は振り返り、うん、と笑った。
「私、大学生の時にはじめて彼氏が出来たんです。ハタチで初めて。なので、それまで処女でした。
彼氏のことは大好きだったんですけど、セックスするのは怖くって。
AVとかも観たことなかったので、なんだか、その行為自体 未知の領域すぎて、好きだけど、出来ないってゆうか、そうならないように はぐらかしていたんです」
「あっ、とりあえず、座ろうか」
俺も、三崎さんも立ったままだったから、三崎さんにソファをすすめて、俺も向かいに座った。
「付き合って半年くらいの時に、旅行に行かないか?って誘われて、箱根の温泉へ行くことになったんです」
「そこが、三崎さんの初体験の思い出の場所ってこと?」
「いえ、初体験はそこじゃなくて……
彼氏と、箱根旅行に行くことにしたけど、旅行に行くってことは、そういうことになるんだ!って、緊張して、緊張して、具合い悪くなっちゃって。
うちの実家ってマンションなんですけど、お隣さん同い年の男の子がいて、小さい時からお互いに行き来して遊んでた仲だったんですけど。
来週 彼氏と旅行に行くけど、緊張して具合い悪いって電話したらすぐに私の部屋に来て、いきなりヤラレて……」
「えっ?レイプされたってこと?」
「そうです。なんの同意もなくなのでレイプってことになるんでしょうね。処女を奪われました。こんなもん、後生大事にとっておいてもしょうがね~だろ?って。
セックスなんて、大したもんじゃない。
だけど、好きな人とするセックスは、これより もっともっと気持ちいいから。
緊張なんかしてねーで、相手に身を任せてたらいいよ!
旅行楽しんでこいよ!って。どう思います?」
どう思います??
突然話を振られて、なんかなんにも言葉が浮かばなかった。
「で、どうしたの?」
「1週間後、彼氏と旅行に行きました。で、彼氏と初めてセックスしました。
紘汰が言ったみたいに、あ、お隣さんですけど、紘汰が言ったみたいに、彼氏とのセックスは本当に良くて。なんてゆうのか、紘汰のお陰だなって思いました。
その彼氏とは2年くらい付き合いましたけど、大学出て遠距離になっちゃって、結局別れてしまったんですけど」
「紘汰くんとはどうなったの?」
「どうもなってません。今は、私も一人暮らししてるので、めったに実家に帰らないし、紘汰も大阪で就職したので、こっちにはあんまり戻ってこないみたいです」
俺は紙コップに、コーヒーを注いで、三崎さんに渡した。
そして、自分の分もカップに注いで飲んだ。
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