5ー7  

 2年目


 春には武道館でライブをやらせてもらった。

デビュー前に、いつかここでやりたいな!ってみんなで言ってたのがすぐに叶っちゃった。

武道館で2ディズ。

チケットが秒で売切れたって。

武道館のキャパは、軽く1万人。

2ディズだから、2万人の人たちが、Realのライブのチケットを買ってくれた!凄いことだな!

ロック色の強い 2ndアルバムの 【Soulful flag】を中心にした構成。

1stアルバム【LOVESICKNESS】から数曲と、デビュー前日にやった、マスコミ向けのお披露目パーティーで演奏した5曲もやった。


 この武道館ライブはDVDとしても出してもらった。

これを、フランスのばあちゃん家へ送ったり、アメリカの母さんのところにも送った。

母さんのところには、ハリスの分とジョージの分も一緒に送って、渡してくれと頼んだ。

ハリスとジョージには手紙も同封した。

ジョージには、デビューすることができたことの報告と、是非日本に来てライブをoneと一緒にさせてほしいとお願いした。

ジョージからは、すぐに返事がきた。

やったな!!早かったな!!10年後には超有名になっちゃうからって言ってたの21だろ。あれからまだ5年じゃん!DVD観たけど、すげーいいじゃん!!個人的にはすぐにでも日本に行きたいよ!

って言ってくれて、あとは、マネジメントのエージェントと話をしてくれと言われた。

俺の方からも、話を通しておくからと。

oneは、世界的に有名なロックバンド。

来てほしい!あぁ、いいよ。って簡単な話ではない。


 とりあえず、Realのメンバーに相談してみることにした。

「あのさ~ちょっと、俺からの提案なんだけど、oneとライブやりたいな!って」

「ワン?ワンってなんだよ」

悠弥が速攻聞いてきた。

「oneって!あのoneか?」

瞬が聞いた。

「UKロックの神様みたいバンドだろ?デービスのドラムは、神プレーだからな!!」

と、大輝も言った。

置いてけぼり状態の悠弥に、龍聖が

「悠弥も In the shadowって知ってんだろ?」

と言った。

「えっ?それ、oneのこと言ってんのかよ?

早く言えよ!oneならもちろん知ってるよ!

ベーシストのシュインはホント憧れだもん!!

って、桂吾なんで突然oneとライブやりたいな!って話になってんだよ?」

「あはははは!だよな!」


そう言えば、高飛びしてた1年間を詳しくみんなに話してなかったな。

龍聖だけにしか話してなかった。

21歳の時に、彼女との別れから立ち直れず、日本から逃げ出してフランスのばあちゃんちへ行った。

そこにたまたま、サマーバケーション中の母さんがいて、バイオリンのレッスンをしてもらった。

あ、俺の母さんは、プロのバイオリニストだってことも みんなに話してなかったかな?

2ヶ月後、母さんが仕事でアメリカに行ってしまうってことで、母さんの先輩のハリスに来てもらって、住み込みでバイオリンを教わることになった。

ハリスに1ヶ月ちょっと教えてもらって、本当はバイオリンよりもギターがやりたいんでしょ?って、ハリスの元カレを紹介してもらった。

それがoneのリーダー、ギタリストのジョージだったこと。

ロンドンでジョージのアパートメントに半年住まわせてもらっていた。

oneの専用スタジオで、雑用をしながら、oneの練習をずっと見せてもらって、ギターをジョージに教えてもらった。

oneの30周年コンサートにサポートギターで、3日間同じステージに立たせてもらった。

日本に帰って、いつかデビューしたら、絶対連絡しろ!一緒にライブやろうぜ!って、ジョージに言われていた。

武道館ライブのDVDをジョージに送ったら、すごく喜んでくれて、oneのマネジメントの人と話をしてくれって言われた。


「桂吾さ~!そんなすごいことを箇条書きみたいにサラっと話すんじゃね~よ!!

フランスの旅は、おまえ傷心の旅だったってゆうから、気~つかって詳しく聞かね~どいたけど、今の話 初耳すぎてビックリだわ!!

そうゆうの、ちゃんと報告しろよ。

フランスのばあちゃん家で、ばあちゃんとまったり紅茶でも飲んでたんかと思ってたのに、ロンドンでそんなことしてたのかよ」

大輝が呆れたように言った。

「わり~!!別に隠してた訳でもないんだけど、なんか、言いそびれてたな。あはは!」

「俺は、桂吾と海に行った時に聞いたよ。

桂吾、エレンと2人で飯食いに行ったりしてたって、羨ましすぎる!って思ってた。

俺、エレン・レヴァントの大ファンだから!!」と、龍聖が笑った。

「じゃ!あとは、ジョージが言うように、マネジメント同士の話だろ!!あのoneだからな!

スケジュールぎっちりだろうし、金額の面とかも、事務所から話をしてもらうしかないんじゃないか?」

と、瞬が言った。

「oneに来日してもらって、一緒のステージに立てるなんて、ありえねーくらい すげーことじゃん!!とりあえず、副社長に話してみようぜ!」と、悠弥は笑った。


まずは、マネージャーの木村さんに話し、副社長に話す時間をとってもらった。


「桂吾!あんたって、いくつ隠し玉持ってんのよ~?お母さんが、マリアだってゆうのだけでビックリしてたのに、今の話、マリアの先輩のハリスって、バイオリニストのハリス・チャーチでしょ?超有名人じゃない。

フランスでハリスにバイオリンを教えてもらってて、ハリスの元カレのoneのジョージを紹介してもらったって?もっと早く言いなさいよ!

oneが来日公演したのって、確か15年前くらいよ~!

それから1度も来日してない。

噂じゃ、日本のプロモーター、YBCがやったんだと思うけど、なんかモメたって聞いたことあるし。

日本で今、oneとパイプあるなんて、なかなかいないわよ!!」

副社長は、興奮気味に一気に喋り倒した。

で、喉乾いた!ってコーヒーをゴクリと飲んだ。

「わかった。じゃ、これ、私があずかるわ!ルピアーノとしても、これは、大きな案件よ~!

でも、oneもRealもお互いにやりたいって思ってるってことなら、話は早いわ!

って言っても、Realがoneと肩を並べて同等に対バンでライブするなんてのは100年早いから、とにかくoneに来日公演をしてもらえるかの交渉ね!ま、任せて!!」

と、言ってくれた。






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